今年度は高効率熱電変換物質の自動探索を目指し、(1)異常ホール伝導度の計算コード開発及び応用、(2)結晶構造探索のコード開発及び応用について取り組んだ。加えて、(3)分子性結晶のトポロジカル相転移に関する計算について実験グループとの共同研究に取り組んだ。 (1)異常ホール伝導度の計算コードについて、前年度中に提案した高速計算の手法を第一原理計算コードOpenMXに実装した。二次元磁性物質の異常ホール伝導度の計算結果は既存コードを用いたものと同等の計算結果が得られた。実装した計算コードを用いて二次元強磁性薄膜FeCl2の熱電変換効率について第一原理計算を行った所、従来よりも大きな異常Nernst効率を示すことが計算によって示された。本結果は共著として論文に纏め出版した。また、本計算コードの幅広い物質系への応用を目指し、適応メッシュによる計算値の改善手法を実装した。ベンチマーク物質となるFe(bcc構造)に対してテスト計算を行った所、先行研究と同等の計算結果を得た。本結果に関する論文及び計算コードのリリースを現在準備中である。 (2)結晶構造探索コードCrySPYに第一原理計算コードOpenMXへのインターフェースを作成した。CrySPYは様々な大域的最適化手法を備えた汎用的な結晶構造探索コードである。現在磁性合金などを対象に室温下で動作可能な熱電変換物質の自動探索を行っている。本ソフトウェアに関する論文は共著としてSTAM methodsへと提出し、現在査読中である。 (3)準備期間中にリリースされたZ2不変量の計算コードを利用し、分子性結晶のトポロジカル相転移に関するトポロジカル相の計算を行なった。α-(BETS)2I3の分子性結晶が圧力誘起でDirac点が誘起し、トポロジカルに非自明な相が出現することをZ2不変量の計算コードを用いて示した、本結果は共著として論文を出版した。
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