研究課題/領域番号 |
20J13023
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
川村 拓史 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 固体イオン交換法 / 金属析出 / ホウケイ酸ガラス / 銀析出物 / 電圧印加 |
研究実績の概要 |
本研究は,固体イオン交換法と電圧印加を併用したガラス内金属析出現象に着目して実験を行った.この金属析出現象は,二工程からなる.まず第一工程として,ガラスと金属箔を接触させ,ガラスを軟化点以下の高温に加熱し,金属箔側を陽極とした電圧(以降,順電圧)を印加することで,ガラスに金属イオンを添加する.その後第二工程として,今度はガラス側を陽極とした電圧(以降,逆電圧)を印加することで,ガラス内部で金属イオンが還元し,金属の樹状析出物が形成する.この金属析出物は,金属と電子の還元反応によって生じるというメカニズムが判明しているものの,ガラス内での成長速度や電場に対する成長方向への影響などは定量的に明らかになっていない.そこで,本研究は,従来の実験方法を改善することで,ガラス内析出現象のIn-situ観察を行った.その結果,電極形状によって電場を変化させた際の析出挙動の撮影に成功した. また,析出挙動をさらに定量評価するため,様々な数値解析モデルを利用して,ガラス内析出現象の解明を試みた.本研究では,拡散律速凝集モデルや絶縁破壊モデルを利用して,数値解析を作成した.その結果,拡散律速凝集モデルよりも絶縁破壊モデルの方が,電場による析出挙動をうまく表現できることが判明した.そのため,絶縁破壊モデルを利用して,電場の変化に対応した析出や,析出の途中で電場が変化するような実験を表現する数値解析を作成した. 今後は,レーザ加熱によってガラス内の温度場を変化させた際の析出挙動について動画撮影を行う予定である.また,電場を変化させた際の析出について,数値解析と比較を行ったところ,実験における電場が数値解析と異なることが分かった.そのため,実験における電極形状を修正し,数値解析と比較できるように再実験を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,ガラス内銀析出物の動画撮影と二次元数値解析を主に行っている.銀析出物の動画撮影については,電場を変化させた銀析出について実験を行ったが,まだ行えた実験条件が多くなく,今後さらに実験を重ねる必要がある.実験が遅れている理由としては,実験時間が非常に要することが挙げられる.本実験は銀添加,ナトリウム添加,銀析出と三回の実験を行うことで,一回分の動画撮影を行うことができる.このように通常の実験よりも多く実験時間を要するため,実験に遅れが生じている.また,ガラス内の温度場を変化させた析出を撮影するために,レーザ加熱による手法を利用しようと考えられる.しかし,使用したレーザが青色半導体レーザであったため,レーザの反射光によってうまく析出挙動を観察することができなかった.そのため,可視光領域のレーザではなく,赤外領域の波長のレーザを使用することで,観察用カメラへの反射光の影響を削減する. また,数値解析については,解析に使用するモデルの格子数を増加させたところ,解析がうまく作動しないという問題を抱えている.そのため,析出時間や電圧を数値解析上でうまく表現することができていない.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,赤外レーザを用いることで,ガラスおよび銀析出物を加熱し,ガラス内の温度場を変化させた際の銀析出挙動の動画撮影を行う.また,電場を変化させた際の銀析出挙動についても様々な条件で引き続き,実験を行う予定である.赤外レーザによってうまくガラスおよび銀析出物の加熱が行えない場合,ガラス背面にレーザの吸収体となるセラミックス等を配置することで,ガラスへの加熱を検討する.また,レーザ加熱によって,銀析出物の成長方向を制御する手法についても検討する予定である. 数値解析については,格子数を増やしてもエラーとならないようにデバッグを行っていく予定である.問題が解決し次第,絶縁破壊モデルの数値解析に電圧や析出時間の概念の導入を検討する.また,絶縁破壊モデルによる数値解析は大まかな析出形状を把握するための数値解析であるため,微細な領域については,フェーズフィールド法による数値解析を行う予定である.
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