今日では,低環境負荷型の化学プロセスが強く望まれており,アミンやイミンのグリーンな合成法としてニトリルの水素化反応が注目されている.本反応では,水素ガスを用いたシアノ基の選択的水素化により原子効率100%で1級アミンを得ることができる.また,形成した1級アミンを中間体とin-situ縮合させることで,2級イミンや2級アミンの一段合成も可能となる.一方,本反応は多段で進行するため単一生成物の選択的合成が難しく,温和な条件下での反応を可能とする高活性触媒の開発例は未だ乏しい.そこで本研究では,常温常圧下でのニトリルの水素化により,アミンやイミンを高収率で与える固体触媒の開発を検討した. 2020年度では,1級アミンを選択的に与える触媒の設計を検討した.選択性の向上には,電子逆供与によって中間体の水素化速度を向上させることが有効だと予想し,現状で最も高活性だったRh-PVPナノ粒子の金属保護剤を変更することで,より電子リッチなRhナノ粒子の調製を試みた.しかし採用した触媒調製法(アルコール還元法)では,PVP以外の金属保護剤はアルコールとの親和性が低く,その使用が困難だった.そこで次に活性金属のバイメタル化を試みた.その結果,Ptナノ粒子にPdを固溶化させることで,Pt種がより電子リッチな状態となり,反応回転頻度がRh-PVPを用いた場合と比較して6倍まで向上した.目的物である1級アミンはPdPt(90:10)上で選択的(>80%)に得られ,加えてPdPt(50:50)上では2級アミンが選択的(>90%)に得られることが明らかとなった. このように2020年度では,常温常圧下で1級アミンを選択的に与える触媒の開発に成功した.また,最終目標であるアミンやイミンの作り分け(ケモダイバージェント合成)には,性質が異なる元素を混ぜ合わせた多元素固溶ナノ合金が有効であることを見出した.
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