研究実績の概要 |
当該年度は、主にホラーティウス『カルミナ』における諸機会詩の継承に関する研究として、古典ギリシアの韻文の祝勝歌や死者への儀礼的な歌を取り上げ、『カルミナ』との比較考察を行った。その内容としては、特に以下の二点に関して調査、考察を進めた。 1)ギリシア抒情詩における様々な機会詩の種類とその定義に関する学説の調査と考察。例えば、上記に挙げた死者への儀礼的な歌は Alexiou,M.(1974), The Ritual lament in Greek Tradition (Cambridge).で取り上げられているように 1モチーフとして、古代で確立していたと考える研究者もいるが、反対意見も見られる。そのため、機会詩について取り上げる本研究でも先行研究の学説に関して調査し、可能な限り自ら考察する必要があり、本年度は、当該分野の研究書籍、論文等の収集を進め、必要な調査を進めた。 2)現在も校正作業の途中であるが、初期ローマ文学についての一英語論文の翻訳を行った。その翻訳作業を通し、近年の Bettini,M.(2012), Vertere: Un'antropologia della traduzione nella cultura antica (Torino).などの研究書で取り上げられている、初期ローマ文化における「翻訳」概念に関する種々議論について知見を深めた。『カルミナ』における古典ギリシア文学の受容が問題とされる本研究においても、ホラーティウスの「翻訳」「翻案」に対する態度を(その初期ローマ文学との時代による差異も含めて)検討することは重要であると考える。主にイタリア語圏で盛んな当該研究に関して、必要な文献の収集、調査を行った。
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