本年度は、コヒーレントナイキストパルスを用いた波長当たり1 Tbit/sを超える高速な長距離WDM伝送の実現に向けた最終的な取り組みとして、WDM伝送実験系を構築し、長距離伝送実験を行った。伝送距離の拡大に向けて、シンボルレートをこれまでの単一チャネル伝送時における1.28 Tbaudから160 Gbaudに変更し、多チャネルナイキストパルスを生成した。波長当たりの伝送容量は、多値度が64 QAMの場合は1.92 Tbit/s/ch、32 QAMの場合は1.60 Tbit/s/ch、16 QAMの場合は1.28 Tbit/s/chとなる。また、昨年度の単一チャネル伝送実験で確立した低非線形分散マネージ伝送路を用いて、長距離伝送用周回ループ伝送路を構築した。周回伝送路中の光増幅器の利得特性は高精度に平坦化し、1周回当たりの平坦性は0.1 dB以下とした。 以上を組み合わせ、偏波多重160 Gbaud、23 チャネルコヒーレントナイキストパルスWDM伝送実験を行った。その結果、25.5 %オーバーヘッドFEC 閾値以下のBERが達成可能な最大伝送距離は64 QAM の場合160 km、32 QAMの場合640 km、16 QAMの場合 1120 kmであった。16 QAMの場合に、1 Tbit/s/chを超える高速なデジタルコヒーレントWDM伝送の中で伝送距離が最長となる1120 km伝送を5.6 bit/s/Hzの周波数利用効率で達成した。この成果により、コヒーレントナイキストパルスが高速・大容量・長距離伝送を実現できる優れた光パルスであることを明らかにした。
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