本研究の目的は、灌流共培養可能なコラーゲンチューブを用いて、組織化させた血管の周囲に多種細胞を培養することで血管内包組織モデルを構築し、アレルギー反応に代表される炎症反応を生体外で再現することであった。 炎症反応の高いレベルでの再現を達成するためには、血管組織において、細胞レベルのみならず組織レベルでのマクロな炎症応答の模倣が求められる。令和2年度は血管内皮細胞のみから構成される血管組織において、細胞・組織レベル双方での血管の免疫化学応答の再現を達成し、さらに薬剤流入による薬効試験の模倣にも成功していた。 令和3年度は、この血管内皮組織と平滑筋を共培養し、さらに細胞の配向も制御することで複雑共培養組織での免疫応答を再現した。具体的には、組織を螺旋状に巻き上げてデバイスに埋め込むことで円周方向に配向した平滑筋組織を構築する手法を確立し、高い精度での配向を実現した。その結果、細胞の配向に起因する血管収縮能の再現が認められた。さらに、血管内皮細胞との共培養により大血管モデルも構築され、アレルギー反応のメディエータであるヒスタミンによる大血管組織の免疫応答反応の再現や、細胞間のインタラクションの確認にも成功した.このような組織レベルでの免疫応答変形反応まで再現した血管モデルは過去に報告されておらず、この血管組織モデルは、病理解明・薬効試験のために非常に有用なデバイスとなると考えられる。さらに、本手法は他の生体組織にも応用可能であり、生体再現性の高い組織モデル開発への大きな寄与が期待できる。
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