研究課題/領域番号 |
20J13073
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
櫻井 幹記 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
キーワード | 微惑星形成 / 原始惑星系円盤 / 乱流 / 直接数値計算 |
研究実績の概要 |
本研究は、原始惑星系円盤中の微惑星形成における衝突破壊問題を回避し得るダスト粒子の存在を明らかにすることを目的としている。本年度は、(1)原始惑星系円盤における乱流場の圧縮性が粒子衝突統計に及ぼす影響と(2)乱流中の様々なスケールの流れ構造と粒子運動の関係の解明に取り組んだ。 (1)では、原始惑星系円盤乱流で想定されるマッハ数の範囲で、流れ場の回転成分と圧縮成分の比率を調整できる外力を用いた弱圧縮性乱流の直接数値計算(DNS)を実施した。また、比較として、非圧縮性乱流のDNSも実施した。その結果、原始惑星系円盤で想定される圧縮性乱流場は、密度揺らぎや弱い衝撃波の発生など、非圧縮性を仮定した場合とは異なる乱流場になり得ることがわかった。一方、粒子の衝突に関する統計量は、主に乱流場の回転成分によって支配され、圧縮性乱流と非圧縮性乱流との間に顕著な差は現れないことが明らかになった。ここで得られた結果は、微惑星形成の衝突破壊問題を議論する際、乱流場を非圧縮性流体として近似することの妥当性を示したものであり、今後のシミュレーションや理論解析に対して重要な方針を与えるものだと考えられる。本研究の結果をまとめた論文は、The Astrophysical Journalにて掲載された。 (2)では、粒子を伴う非圧縮性乱流のDNSで得られたデータを用いて、乱流中の流れ構造と粒子運動との関係を解析した。その結果、渦周りの剪断方向で粒子は低速で運動すること、慣性の大きな粒子の平均衝突速度は粗視化した流れ場における渦領域では歪み領域に比べて2-3割小さくなることを示す結果が得られた。後者の結果は、日本地球惑星科学連合大会、日本流体力学会年会および日本流体力学会中部支部講演会にて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子を伴う圧縮性乱流および非圧縮性乱流のDNSによって、定量的比較が可能な信頼性の高い粒子統計を得ることに成功し、その結果を論文として出版するに至った。また、昨年度までに開発した乱流中の特徴的な流れ構造とその周りの粒子の運動を解析する手法を粗視化した流れ場に応用し、慣性が大きな粒子はスケールの大きな渦周りの剪断方向で低速衝突することが示唆される結果を得た。このように、乱流中の流れ構造に着目することは、未解決問題である衝突破壊問題を解決に導く糸口になる可能性があると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
論文の査読コメントを参考に開発した新たなコードによって、等温を仮定した圧縮性乱流のDNSを実施できるようになった。微惑星形成を含む宇宙分野で現れる流れは主に圧縮性乱流であるが、簡単のために等温を仮定したシミュレーションがしばしば行われている。そこで来年度は、等温の仮定が圧縮性乱流のDNSの結果にどのように影響を与えるのかを定量的に明らかにする。また、乱流中の流れ構造と粒子運動との関係をより詳細に解析し、衝突破壊問題を回避し得るダスト粒子の存在について天文学会等で発表する。
|