研究課題/領域番号 |
20J13122
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
HWANG SUNG HWA 九州大学, システム情報科学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | ナノコンポジット膜 / プラズマ化学気相堆積法 / 水素化アモルファスカーボン / カーボンナノ粒子 / プラズマCVD 高速製膜 / 低応力 / 大面積 / カーボン膜 |
研究実績の概要 |
1)サイズ制御したカーボンナノ粒子(CNP)の堆積機構解明 本研究では、代表者が所属する研究グループが開発したマルチホロー放電プラズマCVD(MHDPCVD)法を用いて作製したCNPのサイズや堆積量を、透過型電子顕微鏡用いて評価した。得られた結果より、CNP作製時の圧力やガス流量がサイズ制御の重要パラメータであることを同定した。(平均サイズは、ガス流量FR=10sccmの139.7nmから、FR=120sccmの23.3nm)得られた結果からCNPの成長機構を検討したところ、放電領域を核発生したCNPが飛行する間のラジカル堆積がMHDPCVDにおけるCNP成長の主要機構であることを明らかにした。次に、CNPの堆積フラックスは放電維持時間に依存すること、放電電極と基板間の温度差によってCNPに作用する熱泳動力が重要パラメータであることを明らかにした。 2)カーボンナノコンポジット膜と膜物性の相関解明 CNPを挿入したa-C:H膜の応力低減について実験的検証を行うため、高周波(rf)スパッタリング法とMHDPCVD法を組み合わせて、ナノ粒子コンポジット水素化アモルファスカーボン(a-C:H)膜を作製した。ここではコンポジット膜として、ミルフィーユ構造膜を作製した。すなわち、Si基板上に、第1層a-C:H膜をrfスパッタリング法で堆積したのち、 第2層としてCNPをMHDPCVD法で堆積した、その後、 第3層a-C:H膜をrfスパッタリング法で堆積して3層の膜を作製した。 CNPが膜表面を覆う面積割合(カバレッジ Cp)を調べ、膜応力のCp依存性を評価した。CNP堆積がないa-C:H膜(密度1.68 g/cm3、膜厚600 nm)Cp= 0 %の圧縮応力は225.9 MPaであるのに対して、Cp= 10.7 %では118.9 MPa(47.3 %減少)と大きく減少した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、保護膜用高密度水素化アモルファスカーボン(a-C:H)の厚膜堆積実現に向けたカーボンナノ粒子(CNP)の挿入によるa-C:H膜の応力低減である。 研究期間1年目に当たる令和2年度では、当初計画通り、サイズ制御したカーボンナノ粒子の堆積機構を検討した。 マルチホロー放電プラズマ化学気相堆積(MHDPCVD)法を用いて、堆積CNPのサイズ分布・フラックスに対する、圧力・電極基板間距離・ガス流量依存性を計測した。得られた結果から、MHDPCVD法におけるCNPの成長機構がナノ粒子へのラジカル堆積であることと、基板へのCNP堆積フラックスに熱泳動力が重要であることを明らかにし、当初の目標を達成した。 得られた知見は、ポストアニーリングなどの従来のナノ粒子混入法に比べ、a-C:H膜へ挿入するCNPのサイズや堆積量の制御に優れた手法であることを示すものである。 加えて、スパッタリング法とMHDPCVD法を併用したa-C:H/CNP/a-C:Hサンドイッチ型3層膜の堆積と応力低減の結果から、応力低減機構の解明に着手したことは、2年目に予定していた研究項目であり、期待以上の研究の進展である。
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今後の研究の推進方策 |
大面積化が容易なプラズマCVD法を用いて 低応力・高密度カーボン薄膜を高速製膜を実現するため以下の研究を推進する。 まず前年度までに得た知見を基に構築した容量結合型PECVD装置を 利用して、高密度水素化アモルファスカーボン薄膜の高速作製法の確立と、ナノ粒子混入によるストレス抑制機構の解明を目指す。水素化アモルファスカーボン薄膜堆積については、圧力・製膜材料、基板温度・バイアス電圧、添加ガスの種類・濃度などをパラメータとして、製膜速度や膜密度等の膜物性に対する相関を定量的に明らかにすることで、高密度膜の高速製膜の実現を目指す。 ナノ粒子混入によるストレス抑制機構解明については、ナノ粒子の構造・サイズ・混入量と膜の機械的特性の相関を明らかにすることで、ストレス抑制機構を解明する。
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