研究期間2年目に当たる2021年度は、プラズマCVDを用いた低応力・高密度カーボンナノコンポジット膜の統合製膜システム構築に着手した。まず、容量結合型プラズマCVD法を用いたa-C:H製膜方式を検討した。放電電極に基板を置いたカソードカップリングが、接地電極に基板を置いたアノードカップリングよりも、高密度a-C:H膜の高速堆積に有利であることを明らかにした。 次に、容量結合型プラズマCVDで生成したCNPサイズのガス流速依存性を明らかにした。上記の知見を基に、2つのプラズマ源を備えたプラズマCVD装置を用いてa-C:H/CNP/a-C:Hサンドイッチ構造のCNPコンポジットa-C:H膜を作製した。ナノ粒子堆積のないa-C:H膜(密度1.88 g/cm3、膜厚300 nm)の圧縮応力は1.59 GPaであるのに対して、CNPカバレッジ(Cp)8.9 %で1.02 GPa(35.8 %減少)まで減少した。この結果は、大面積・高速製膜に適したプラズマCVDでもCNPコンポジットa-C:H膜により応力低減が可能であることを示した。 ここまで実証したa-C:H/CNP/a-C:Hサンドイッチ構造のCNPコンポジットa-C:H膜による応力低減のメカニズム解明に向け、Cp= 8.9 %における膜ストレスの第3層のa-C:H膜厚依存性を評価した。第3層a-C:H膜厚が約50nm以下では、CNPなしの場合と同じストレスを示したが、50nm以上からストレス低減が起き、膜厚増加に対するストレス増加率がCNP無しに比べて低くなることを明らかにした。 Cp=8.9%におけるCNPの堆積状況観察から、堆積したCNPは5nm以下の小サイズCNPと5-30nmのサイズ範囲にある大サイズCNPに分かれており、大サイズCNPの粒子間平均距離dc=50nmとストレス低減開始膜厚が一致することを明らかにした。
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