研究課題/領域番号 |
20J13148
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇野 晋平 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 呼吸鎖複合体-I / キノン / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
複合体-Iの反応の“鍵領域”であるキノン結合ポケットの構造特性を明らかにするために、複合体-Iのプロテオリポソームを用いた反応系の構築およびそれを用いた人工キノンの評価を行うことを目的とした。申請書の年次計画に基づき複合体-Iとキノール酸化酵素(AOX)をプロテオリポソームに組み込んだ評価系の確立を目指した。ウシ心筋ミトコンドリアからのリン脂質の抽出、複合体-IとAOXのモル比の最適化を行うことで、期待通りの反応系を確立することができた。 次にキノン結合ポケットの内径(~4 Å)よりも嵩高い構造(~13 Å)を持つoversized-quinone類(OS-UQ類)を合成した。本化合物に関してプロテオリポソーム系にて電子伝達活性を評価したところ、ウシ心筋亜ミトコンドリア粒子(SMPs)における実験結果とは対照的にほとんどのキノンで基質にならないことが判明した。現時点では、SMPsとプロテオリポソーム系の間の相反する結果を十分に説明することはできないが、ミトコンドリア膜に埋め込まれた複合体-Iと、精製した複合体-Iとの間には何らかの構造的な差異が存在している可能性が示唆された。 その後、キノン類の構造活性相関研究を通して、この現象がわずかな立体障害の差により引き出されることを明らかにした。現在、「SMP内のnativeな複合体-Iと単離精製した複合体-Iの間には構造的な差異が存在する」という作業仮説を立て、光親和性標識実験を駆使することで解明に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した通り、複合体-Iとキノール酸化酵素を含むプロテオリポソーム系の確立し人工キノン類の活性測定を行ったため、予定通りの進展は見られたといえる。一方で、当初の想定とは異なりSMPと単離酵素の間に構造的な差異が存在する可能性を示唆する実験結果が得られたが、これまでにそのような実験結果の報告はなかったため、新たな発見であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は「SMPの複合体-Iと単離酵素の複合体-Iの間には構造的な差異が存在する」という作業仮説を立て、光反応性基を導入したキノンプローブを用いることで両者の違いを明らかにする予定である。
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