研究課題/領域番号 |
20J13151
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 涼馬 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 炭素繊維強化複合材料 / 薄層CFRP積層板 / 層厚効果 / 損傷進展解析 / 連続体損傷力学 |
研究実績の概要 |
本研究は,層厚・積層構成を設計パラメータとする高自由度複合材設計の実現に向けて,層厚効果を考慮した薄層CFRP積層板のマルチスケール損傷解析手法の開発を目的としている.本年度は複合材積層板レベルにおいて内部損傷進展・破壊強度を予測するメゾスケール解析モデルの構築について取り組んだ. 層厚依存型の損傷進展モデルの構築のために,層厚の異なるCFRP積層板を対象に引張負荷・除荷試験を実施した.光学顕微鏡やX線探傷による損傷観察により,き裂密度や剛性低下量などの損傷挙動特性を取得した.損傷力学手法に基づいて,剛性低下量から損傷特性を評価し,繊維と直交方向・せん断方向荷重下における薄層CFRPの損傷進展に層厚が与える影響について調査した.その結果,繊維と直交方向に荷重が作用する場合では,薄層による層内き裂の発生・累積に対する抑制効果が確認された一方で,せん断荷重下においては,き裂発生によらず層厚依存性を示さないということが明らかになった. 実験により評価した損傷特性から層厚の影響を考慮した損傷力学モデルを構築した.メゾスケール解析モデルには,連続体損傷力学と結合力モデルを組み合わせた解析モデルを採用し,構築した層厚依存型の損傷進展モデルを有限要素解析に実装した.メゾスケール損傷解析により,無孔引張試験片の損傷進展・破壊強度評価を行った.せん断・複合応力下の損傷・塑性進展を含む非線形応答や異なる層厚を有する擬似等方性積層板の損傷・破壊強度を良い精度で予測可能であることを示した.また,メゾスケール損傷モデルの妥当性検証として,層厚・繊維配向角の異なる複数の有孔試験片で引張破壊試験を実施し,強度・破壊特性を評価した.今後は有孔引張試験の損傷解析を実施し,層厚が内部損傷進展へ与える影響について数値解析的に調査する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り,層厚の異なるCFRP積層板を用いた負荷・除荷試験の実施,取得した損傷特性に基づいた層厚依存型の損傷進展モデル構築,メゾスケール損傷解析への実装と損傷・強度評価を完了することができた.メゾスケール損傷解析による損傷進展・破壊強度評価では,あらゆる層厚のCFRP積層板の損傷・塑性進展を含む非線形応答や破壊強度を高精度に予測できることを示し,構築した損傷モデルの有用性を確認した.以上より,順調に研究が進展している状況と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
構築した損傷解析手法の妥当性検証に向けて,層厚と0度層比率を変えた有孔引張試験を実施し,応力集中の生じる円孔周辺の損傷進展を実験的に評価する.有孔引張試験の損傷進展解析を実施し,円孔を有する場合の薄層CFRP積層板における損傷進展を予測する.実験で実施しなかった様々な層厚や0度層比率を有する積層板において強度予測を行い,薄層CFRPを適用する複合材構造の設計時に有用な層厚や積層構成について模索する.
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