研究課題/領域番号 |
20J13189
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西 颯人 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 住宅市場 / 市場分割 / ヘドニック分析 / ベイズ統計 |
研究実績の概要 |
本研究の狙いは、住宅・土地市場を対象としたヘドニック分析において、地理的特性と時系列的変化を反映した市場分割法を開発・応用することにある。このためには、まず新しい市場分割法の理論的整理がなされていることが望ましい。そこで、市場分割法の経済学的な理解や、適切な分割が持つべき性質を整理し、それらを踏まえた新しい推定方法を提案した論文を発表した。当該論文により、単なる予測精度の向上を超えて、市場分割の狙いや解釈が体系的に整理され、地理的特性と時系列的変化を考慮する必要性が明確になった。当該論文においては世田谷区を対象に、単純な多変量正規分布を用いて地理的特性を考慮した市場分割を行っており、その結果住宅市場の分割に対して物件の地理的な位置が大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。これにより、実証的にも地理的特性の重要性が明らかとなったため、本研究課題を進める重要性が立証されたと考えている。 さらに、住宅市場における住宅特性の性質を明らかにした論文や、住宅市場の時系列的変化に特にフォーカスして取り組んだ研究を並行して発表した。特に後者に関しては、海外の住宅市場を対象に時系列的変化に着目したモデルを構築・分析を行うことで、市場構造の時系列的変化の重要性が国内だけのものではないことを確認するとともに、時系列アプローチの知見を深めることができた。今後これらの研究を踏まえ、提案した市場分割法に時系列的変化を組み込む等の展開を予定している。 応用上の観点からは、提案した市場分割モデル・手法の高速かつ拡張性の高い実装の開発を進めている。適切なタイミングで発表を行い、今後の研究および政策立案に広く貢献したいと考えている。また並行して、地理的特性や時系列的変化によりフォーカスした手法も検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市場分割法の理論的な整理に関して、当初の計画以上の大きな進展があり、査読論文として発表することができた。一方で、時空間的なモデリングに関しては改善の余地があるため、全体としてはおおむね順調な進展であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
特に住宅市場の時空間的な特性を捉えるのに適した手法を開発することに注力していく。複雑な住宅の分布形状や時系列変化を想定してモデルを構築・実装・実問題に適用する。同時に市場分割法との連携も視野に入れながら、研究を発展させる。
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