申請者が目標とした「触覚センサと触覚ディスプレイのインタラクティブなシステムの開発」のために「教師なし学習による自然言語処理を用いた触覚情報の可視化手法」を確立した。 触覚ディスプレイの提示できる擬似触覚は機械的に皮膚を変形させたり電気を用いて擬似的に触覚を再現しているものなど多岐にわたり、単純に触覚ディスプレイ表面の物性値を測るだけではヒトが認知する触覚と紐づけられるわけではない。また、ヒトの認知はテクスチャ的認知だけでなく、感情的な要因も含まれるため従来の方法では認知の分析は非常に難しい。 そこで申請者は、触覚が言語として認知されていることに着目し、世の中のテキストコーパスから触覚情報を抽出できるのではないかと考えた。触覚が言語として認知されているということは、触覚にまつわる単語の意味は本質的に触覚のメタ情報を有していると言える。よって、自然言語処理を用いてテキストコーパスから文章や単語の意味を学習させることによって触覚情報を含む単語の意味を学習できる。すなわち、触覚認知情報を抽出できるという手法である。 本アプローチは、時間のかかるヒトの官能評価実験を行うことなく、大量の有用なデータ、すなわち言語化された触覚認知情報を抽出することが可能とした。 申請者は日本語の触覚情報を表すのによく使われるオノマトペに着目し、オノマトペを自然言語処理モデルによって、埋め込み表現を獲得、さらにこれらを可視化することで、本埋め込み表現が触覚認知情報を有していることを明らかにした。これにより、NLPによる触覚認知情報へのアプローチの有効性が確認された。この触覚オノマトペから生成される埋め込み表現は触覚センサと触覚ディスプレイを紐づける指標であり、触覚センサと触覚ディスプレイのインタラクティブなシステムの開発」における重要な基盤技術である。
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