研究課題/領域番号 |
20J13277
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
野村 知宏 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | イネ / 倒伏抵抗性 / 耐倒伏性 / 強稈性 / QTL / 在来品種 |
研究実績の概要 |
近年、気候変動によって台風の勢力が増大しており、今後これらの台風が到来しても倒伏しないイネ品種を開発するためには、短稈化に加えて強稈化を付与し、倒伏抵抗性を向上させることが不可欠である。本研究では、スーパー台風にも耐えうる強稈イネ品種の開発に向け、我が国で栽培されてきた在来品種を含む多様な生態型を有するイネ品種を用いてゲノム解析を行うことにより、強稈化に有用な新規のアレルの探索とその集積系統の強稈性の評価を目的とした。 令和2年度では、熱帯ジャポニカの遺伝背景を有する極太稈在来品種「渡舟」と温帯ジャポニカの極細稈品種「中生新千本」のF2集団を育成し、QTL-seq法によるゲノム解析を行うことにより、「渡舟」に由来する著しく効果の高い強稈関連遺伝子座の探索を行った。その結果、第1染色体短腕と第2染色体長腕に渡舟型で最下位伸長節間の断面係数を増加させる量的形質遺伝子座(QTL)が検出された。「渡舟」は他の日本の品種と比較して著しく穂重型の特徴を持つことがわかり、また先行研究において断面係数と枝梗数を同時に増加させる多面的発現効果のある遺伝子が報告されていることから、断面係数に加えて枝梗数や止葉長といった形態形質についてもQTL-seqを行った。しかしながら、本研究においては各形質に関するQTLは検出されたものの、断面係数と領域が重複するQTLは検出されなかった。これらのことから、穂重型形質に関連する「渡舟」の断面係数を増加させるアレルと枝梗数を増加させるアレルはそれぞれ独立して存在し、機能している可能性があることが示された。また、QTL領域内の候補遺伝子の絞り込みのために、出穂約30日前の「渡舟」と「中生新千本」の茎頂分裂組織のRNA-seqを行い、発現量に関するデータを取得した。加えて、「渡舟」と「中生新千本」の交雑後代の世代促進を進め、F4世代の種子を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、極太稈品種の「渡舟」と極細稈品種の「中生新千本」の交雑後代を用いて、QTL-seq法により「渡舟」に由来する強稈化QTLの特定を行うことができた。また、太稈に関連することが予想される他の形態形質についてもQTL-seq法を行い、多面的発現効果についても検討することができた。加えて、RNA-seq法によりQTL領域内の候補遺伝子を絞り込むためのデータも取得できたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で明らかになった断面係数を増加させる渡舟型のQTLと、これまでの研究で独自に特定している我が国の温帯ジャポニカイネ在来品種に由来する強稈化関連QTLを比較し、QTLの再現性やその由来について検討する。また、強稈性に関する有用なQTLが集積した系統を用いて、QTLの集積が稈の力学的特性に与える影響を評価する。本研究で得られた成果を取りまとめ、査読付きの国際学術雑誌に投稿する。
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備考 |
ワークショップにおける発表 発表者 野村知宏 表題 我が国のイネ品種における稈と葉鞘の倒伏抵抗性関連遺伝子座の同定 ワークショップ名 「イネ研究の最前線」~日本各地から、イネの新品種や研究、事業をオンラインで紹介~ 発表年 2020年
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