研究課題/領域番号 |
20J13292
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
國井 厚志 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | エピゲノム編集 / 選択的スプライシング / CRISPR-Cas9 / 転写調節 / 因子集積 |
研究実績の概要 |
本研究では、エピゲノムに起因する選択的スプライシングの異常を再現および修正可能な技術の確立を目的とする。令和2年度では、スプライシング制御のモデルケースとする遺伝子座を選定し、CRISPRベースのエピゲノム編集ツールを構築したほか、因子をより効率的に作用させるためのツールの確立も実施した。 標的遺伝子座を2種類選定し、これらの選択的エキソン領域特異的にエピゲノム因子を作用させるため、最も単純なdCas9への直接連結のほか、効果の上昇を狙い、SAM(Konermann et al., 2015)を模したMS2による集積、ならびに当研究室で開発したTREE(Kunii et al., 2018)による集積を試みたが、スプライシング様態の変化は確認されなかった。 システムの効果を更に高める必要があると考えられたため、当該年度は因子をより効率よく作用させるための基盤づくりに集中した。RNA-タンパク質結合システムを、これまでのMS2にPP7、boxB、comを加えた計4種類、タンパク質タグシステムを、これまでのSunTagにsfGFP11 tag、MoonTagを加えた計3種類に増やし、4通りのSAM様集積と、12通りのTREE様集積が検討可能となった。転写活性化因子を例にとって総当たりの活性比較を実施し、特に強い効果を示すシステムを5種類確認した。これらを従来の主要な高活性型転写活性化システムと比較すると、2細胞株・3遺伝子座において、少なくとも1種類以上が有意に高い活性を示した。また、最も強い効果を示すシステムは細胞株・標的遺伝子座に依存し、多数のシステムを検討することの意義が見出された。一連のシステム群を「Effectors Accumulated by RNAs and Tags for High activity(EARTH)」コレクションと命名し、現在論文化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、エピゲノム編集による選択的スプライシング制御の実現には至らなかった一方、既存の技術を上回る強力な人工転写活性化システムの開発に成功した。本システムは、エピゲノム編集を含むその他の技術にも転用可能であることが期待される。上記のような点から、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では、因子集積システムの拡張に得られた成果を論文にまとめて投稿し、タンパク質レベルでの発現解析など、追加のデータを取得する。また、整備した集積システムをエピゲノム編集にも転用し、選択的スプライシングの制御を再度試みる。なお、令和2年度では、標的遺伝子座ごとにエピゲノム因子を1種類のみ使用したが、同様の活性を有する他の因子の使用も検討する予定である。
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