研究課題/領域番号 |
20J13299
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
富田 篤弘 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 生物物理 / 構造生物学 / P型ATPase |
研究実績の概要 |
本研究では(1)ATP7ファミリーとATOX1との複合体の構造を決定することでATP7ファミリーに対するATOX1からの銅イオンの受け渡し機構を明らかにし、(2)ATP7ファミリーの構造を銅イオン存在下で輸送過程の複数の状態で決定し、得られた構造をもとに脂質と水分子を含む生体内の条件を再現した全原子分子動力学シミュレーション(MDシミュレーション)を行うことで銅イオンの輸送経路・輸送機構を明らかにする。 現在は本研究で必要となるATP7ファミリーの構造解析に取り組んでおり、これまでにヒト由来のATP7ファミリーで構造解析に適したコンストラクトの構築及び発現・精製系の構築に成功した。現在までにATP7ファミリーの構造解析に適したコンストラクトの報告及び発現・精製系の報告はなく、特に病理・薬理的観点からも重要なヒト由来のATP7ファミリーの構造解析向けのコンストラクトの確立および発現・精製系の構築は本研究の重要な業績であると言える。本研究で得られたコンストラクト・発現・精製系は今後ATP7ファミリーの研究を行っていくうえで必要不可欠なものであり、とても重要な成果である。 また、現在までに構造解析に成功した他のP型ATPaseを元にシミュレーション系の構築を行っており、輸送サイクルを捉えるために必要な計算システムの構築に成功している。特に、P型ATPaseのシミュレーションに必要なリン酸化アスパラギン酸をはじめとする特殊な力場・トポロジーの作成に成功しており、シミュレーション系の実行の下地は整っており、本研究の今後の展開に向けた重要な業績がそろいつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発現方法・精製方法の検討およびグリッド作成方法の検討を行った結果、ヒト由来のATP7A/7Bについて構造決定に十分な純度・収量での精製方法の確立に成功し、クライオ電子顕微鏡での構造決定に向けたグリッドの調整方法の確立に成功した。しかしながら、調整したグリッドからは構造決定に十分な二次元投影像および二次元平均像を得ることはできなかった。原因としては、試料の均一性が不十分であった点・精製試料の一部が凝集して二次元構造を維持していなかった点が挙げられる。これらの問題を解決するために、今後はタンパク試料の生物種の検討、発現・精製方法の改善及びグリッド作成方法の最適化を行う。具体的には、現在構造決定を試みているヒト由来のATP7ファミリー以外にもマウス・ニワトリ・ブタなど多様な生物のATP7ファミリーの構造決定を試みる。さらに、凝集体を形成しているタンパク質の量を減らすために発現・精製方法の改善を行う・具体的には発現ホストを現在のGNT1-のHRK293SからGNT1を欠失していないHEK293Fなどに変更することでより生体内に近い糖鎖修飾が施されたタンパク質の発現を行い、基質存在下で精製を行うことで試料の安定化を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はタンパク試料の生物種の検討、発現・精製方法の改善及びグリッド作成方法の最適化を行う。具体的には、現在構造決定を試みているヒト由来のATP7ファミリー以外にもマウス・ニワトリ・ブタなど多様な生物のATP7ファミリーの構造決定を試みる。さらに、凝集体を形成しているタンパク質の量を減らすために発現・精製方法の改善を行う・具体的には発現ホストを現在のGNT1-のHRK293SからGNT1を欠失していないHEK293Fなどに変更することでより生体内に近い糖鎖修飾が施されたタンパク質の発現を行い、基質存在下で精製を行うことで試料の安定化を試みる。
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