研究課題/領域番号 |
20J13346
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本田 信吾 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | デジタルバイオアッセイ / デジタルバイオ分析 / 一分子計測 / 一粒子計測 / 多次元計測 / インフルエンザウイルス / アルカリフォスファターゼ |
研究実績の概要 |
今年度は、(1)微小空間へのインフルエンザウイルス粒子の固定化方法の確立および(2)NA阻害剤 (NAI)に対するウイルス一粒子ごとの応答性 (IC50)の計測を目標として研究に取り組んだ。
(1)については、チャンバー内面に対するウイルス粒子の吸着を利用し、ウイルスの安定的な固定化に成功した。(2)については、2種類のNAI (Oseltamivir, Zanamivir)につき、NAI濃度を変化させながら繰り返し一粒子ごとのNA活性を計測する技術 (多次元デジタル計測技術)を確立。ウイルス一粒子ごとのIC50を計測することに成功した。そしてNA活性およびIC50の計測誤差を見積もることに成功した。最後に、計測誤差では説明できない、粒子間のIC50のばらつきが存在することを明らかにした。このばらつきは一般的なNAI耐性株におけるIC50のばらつきより小さく、明確なNAI耐性を示す粒子の検出はなかったものの、本系により一粒子レベルで耐性株を検出できる可能性が示された。
さらに追加の課題として、(3)確立した系の酵素一分子計測への展開にも取り組んだ。本研究で開発した多次元デジタル計測技術をモデル酵素アルカリフォスファターゼ (ALP)一分子計測に展開し、複数の阻害剤への応答性に基づいて異種由来のALPを判別できることを示した。これは、新たな疾患マーカーの確立に寄与する可能性がある他、これまでに不可能であった、酵素一分子の多次元的な評価に基づく分子進化にもつながり得る成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の目標は(1)微小空間へのインフルエンザウイルス粒子の固定化方法の確立および(2)NA阻害剤 (NAI)に対するウイルス一粒子ごとの応答性 (IC50)の計測の二つであった。
これら二つの目標の達成にとどまらず、開発した多次元デジタル計測技術のさらなる展開可能性を示したことが理由である。特に(2)において、複数のNAI (Oseltamivir, Zanamivir)に対するIC50の同時計測 (多パラメータ計測)を実現し、パラメータ間の相関解析によりウイルス粒子を含む計測対象に対するより解像度の高い理解を得られる可能性を拓いた。さらに追加の課題として本系を酵素一分子計測に展開し、複数の阻害剤への応答性に基づいて異種由来のALPを判別できることを示した。
以上の通り、目標に対する堅実な成果に加え、追加の技術展開の実証をも行った点で、期待以上の進展があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、目標としていたNAIに対するインフルエンザウイルス一粒子ごとのIC50のばらつきの計測に成功した。しかしこのばらつきは明確なNAI耐性とは言えず、先行研究で報告された、高濃度のNAI存在下でNA活性を保持する粒子が一般的に定義されるNAI耐性株 (元株と比較しIC50が10倍以上)とは異なることを示唆する結果となった。他方、(3)確立した系の酵素一分子計測への展開において、さらなる応用に繋がる成果が得られたことから、今後の研究の基軸を酵素一分子計測への展開に移すこととした。具体的には、確立した酵素一分子の多次元デジタル計測への高機能酵素選抜への応用可能性を検討する。
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