セリウムは、安定な三価の酸化数に加え、希土類元素では珍しい四価の酸化数をとることができ、三価と四価の間の一電子酸化還元能を活かした酸素酸化触媒の有力な候補となり得る。また、セリウムの酸化物であるセリアは酸素の吸着や放出に優れた化合物として利用されており、その高い酸素吸蔵能力から自動車の三元触媒に代表されるように不均一系触媒の担体や助触媒として応用されている。その観点から、酸素架橋セリウム多核錯体をセリアの分子モデルとして捉え、今年度は、貴金属含有の金属混合錯体の合成に取り組んだ。その結果、昨年度合成したセリウムーロジウム異種金属混合錯体の合成条件の精査することにより、再現性の高い合成条件の探索に成功した。さらに、セリウムーロジウム錯体とカチオン性金錯体との反応により、セリウムーロジウムー金三元系金属錯体の合成に成功した。以上のように、多種多様な異種金属混合錯体の合成法が確立されつつあることから、さらにそれらの反応性を明らかにし、新規触媒反応への応用の準備が整いつつある。
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