研究課題
現在、心血管疾患(CVD)発症リスクマーカーとして広く用いられている高比重リポタンパクコレステロール濃度(HDL-C)は、必ずしもCVD発症リスクを反映しないことも同時に報告されている。そのため、HDL-Cに加え、HDLの持つ抗粥状動脈硬化機能そのものの測定が試みられている。コレステロール引き抜き能(CEC)はHDLの主要な機能であり、CVDリスクマーカーとしての有用性もすでに報告されているものの、その測定の煩雑さから実臨床での利用には至っていない。我々は本研究実施以前に、病院検査室で測定可能なCEC測定法である固相化リポソーム結合ゲルビーズ(ILG)法を開発し、その臨床利用における妥当性を報告した。本研究では、ILG法によるCEC評価法の確立およびその臨床的意義の解明を目指した。ILG法は従来法より簡便なCEC測定法ではあるものの、まだ臨床現場で測定を行うには明らかにすべき点が残っていた。本検討では、ILG法による臨床現場でのCEC測定をより実現可能なものへと改良することを目的とした。測定時間の短縮、reference物質の設定、血清以外の測定検体の検討、血清中の他の物質の影響などについて検討を行い、従来法よりより簡便に、かつより様々な特性の検体を測定できるILG改良法を確立した。また、これまで確立したILG法で測定したCECが、実臨床における冠動脈の動脈硬化病変とどのように関連するかを明らかにすることは、ILG法の臨床利用を目指す上で最も重要である。冠動脈疾患を有する患者または冠動脈疾患が疑われる患者を対象とし、116名の患者より得られた血液検体のCECの測定を行った。現在、患者の基礎背景や生化学検査結果、心エコー検査結果や、冠動脈造影所見および光干渉断層法所見等の臨床データとCEC値について解析を進めている最中である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
BioMed Research International
巻: 2021 ページ: 1~8
10.1155/2021/9241259
Bioscience Reports
巻: 40 ページ: -
10.1042/BSR20201495
Journal of Lipid Research
巻: 61 ページ: 1577~1588
10.1194/jlr.RA120000635
Biological Chemistry
巻: 402 ページ: 439~449
10.1515/hsz-2020-0288