研究実績の概要 |
研究課題『下部マントル含水鉱物の高温高圧下電気伝導度測定による下部マントル含水量の推定』は以下の3点を行った. 1. 外部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いた500 ppm wt.%含水ブリッジマナイトの高温高圧下電気伝導度測定 下部マントルの含水量を定量するため,水を500 ppm wt.%含む含水ブリッジマナイトの電気伝導度測定を外部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いて行った.実験は全部で 5 run 行い,そのうち 1 run において圧力温度30万気圧, >1000 Kの条件で測定に成功した.得られた結果および先行研究で報告されている無水ブリッジ マナイトの電気伝導度の結果から,下部マントルの含水量の上限値が10 ppm wt.%であることを明らかにした. 地球マントルにおける他の層の含水量の推定値と比較して下部マントルは従来考えられていたよりもずっと水に乏しいことを示唆する結果である. 2. レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いた電気伝導度測定の開発 下部マントル全域の温度圧力条件(25 万気圧, 1500 K~135 万気圧, 2500 K)で測定を行いたいが,従来の外部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルでは技術上の温度上限は 1500 K であり,下部マントル全域の温度条件を網羅することができない.レーザー加熱は外部抵抗式加熱よりも発生可能温度が高い(> 10,000 K)が,特に透明・ 準透明鉱物の電気伝導度測定が行える手法は報告例がなかった.そこで本年度はレーザー加熱式ダイヤモンドア ンビルセルを用いた電気伝導度測定手法の開発を行った.その結果,40万気圧, >2500 K における電気伝導度測定に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,水を500 ppm wt.%含む含水ブリッジマナイトの電気伝導度測定を外部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いて行った.その結果,圧力温度30万気圧, >1000 Kの条件で測定に成功した.得られた結果および先行研究で報告されている無水ブリッジ マナイトの電気伝導度の結果から,下部マントルの含水量の上限値が10 ppm wt.%であることを明らかにした. 地球マントルにおける他の層の含水量の推定値と比較して下部マントルは従来考えられていたよりもずっと水に乏しいことを示唆する結果であった.しかし実験温度圧力は,特に温度について下部マントルのものよりも低く,実験温度圧力をより高温高圧に拡張する必要がある. 研究実績概要の2.にある通り,本研究で世界で始めてどんな組成の鉱物においても下部マントル温度圧力条件にて精密な電気伝導度測定を行う技術の開発に成功した.そのため今後は下部マントル全域の温度圧力条件(25 万気圧, 1500 K~135 万気圧, 2500 K)で含水ブリッジマナイトの電気伝導度測定を行うために,圧力温度条件を広げて測定を行う.
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