片麻痺患者の筋シナジーに合わせて介入する起立動作のリハビリテーションシステム

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 20J13582
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 湖上 碩樹 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
• 研究期間 (年度): 2020-04-24 – 2022-03-31
• キーワード: 起立動作 / リハビリテーション / 筋シナジー

研究実績の概要

脳損傷で筋を適切に活動させられない片麻痺患者は理学療法士のリハビリテーションにより運動機能の改善を目指す．運動機能の改善には高頻度なリハビリテーションが求められるが，理学療法士の数は限られているためリハビリテーションの頻度が減少し，運動機能が十分に改善されない恐れがある．本研究は日常生活の起点となる起立動作に着目し，効率的な起立動作のリハビリテーションを目指す．片麻痺患者の起立動作は健常者と比較して姿勢制御が不安定になることや，筋の活動タイミングの変化が報告されている．このような片麻痺患者に対し，理学療法士は患者それぞれに対して適応的に介入し，患者の運動を改善するリハビリテーションを行う．しかし，起立動作が理学療法士の介入や回復過程でどのように変化するのかは分かっていない．本研究ではリハビリテーションによる片麻痺患者の運動の変化や理学療法士の介入動作の調査を目的とし，個々の片麻痺患者への介入の指針を理学療法士に与えられるシステムの開発を目指す．

片麻痺患者の回復過程の起立動作を調査するため，本研究では発症3か月以内の片麻痺患者に着目した．片麻痺を発症3か月で機能回復がプラトーになることから，退院時の運動機能が良かった群と悪かった群において，発症3か月で運動に差があるのではないかと仮説を立てた．機能回復に重要な特徴を調査することで，発症3か月以内でどれくらいの機能が必要かという達成目安を作成することが可能となる．仮説を検証するため，脳卒中発症3か月以内の片麻痺患者21人の起立動作を計測した．退院時の機能的自立スコアを元に2群に分けて解析を行った．結果として2群の起立動作において，筋肉の活動のタイミングや動作時間に違いがあった，本解析から動作時間が長くなっても，麻痺側を使うことが機能回復には重要であることが分かった．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で目的とする，リハビリテーションによる片麻痺患者の運動の変化や理学療法士の介入動作の調査において，片麻痺患者の運動の調査を行うことができたため．

今後の研究の推進方策

理学療法士が片麻痺患者それぞれに介入する動作の解析を行う予定である．理学療法士が片麻痺患者の膝と臀部をそれぞれ把持する介入に着目する．これまでの自身の研究から理学療法士は片麻痺患者の離臀のタイミング，すなわち重心を前方移動から上方移動に切り替えるタイミングを意識して介入動作を行っていることが分かっている．しかし，患者ごとに何を変えているかまでは分かっていない．膝を引く，臀部を持ち上げる，という動作のタイミングを患者ごとに変えているのではないか，と作業仮説を立て，次年度に検証する．

研究成果

• [雑誌論文] Analysis of muscle synergy and kinematics in sit-to-stand motion of hemiplegic patients in subacute period (2021)
  • 著者名/発表者名: Hiroki Kogami, Qi An, Ningjia Yang, Ruoxi Wang, Kazunori Yoshida, Hiroyuki Hamada, Hiroshi Yamakawa, Yusuke Tamura, Shingo Shimoda, Hiroshi Yamasaki, Moeka Sonoo, Fady Alnajjar, Noriaki Hattori, Koji Takahashi, Takanori Fujii, Hironori Otomune, Ichiro Miyai, Atsushi Yamashita, and Hajime Asama
  • 雑誌名: Advanced Robotics 巻: 35 ページ: －
  • 査読あり
• [雑誌論文] Temporal Muscle Synergy Features Estimate Effects of Short-Term Rehabilitation in Sit-to-Stand of Post-Stroke Patients (2020)
  • 著者名/発表者名: Ningjia Yang, Qi An, Hiroki Kogami, Kazunori Yoshida, Hiroshi Yamakawa, Yusuke Tamura, Shingo Shimoda, Hiroshi Yamasaki, Moeka Sonoo, Matti Itkonen, Fady Shibata-Alnajjar, Noriaki Hattori, Koji Takahashi, Takanori Fujii, Hironori Otomune, Ichiro Miyai, Atsushi Yamashita, and Hajime Asama
  • 雑誌名: IEEE Robotics and Automation Letters 巻: 5 ページ: 1796～1802
  • DOI: 10.1109/LRA.2020.2969942
• [学会発表] リハビリテーションにおける片麻痺患者の起立動作の改善過程の解明滑らかさと安定性による評価―滑らかさと安定性による評価― (2020)
  • 著者名/発表者名: 湖上 碩樹，安 琪，吉田 和憲，王 若曦，山川 博司，楊 濘嘉，山崎 弘嗣，Fady Shibata-Alnajjar，園尾 萌香，下田 真吾，服部 憲明，高橋 幸治，藤井 崇典，乙宗 宏範，宮井 一郎，田村 雄介，山下 淳，淺間 一
  • 学会等名: 計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会
• [学会発表] 片麻痺患者の起立動作中の手すりにかかる力を用いた運動障害の度合の分類 (2020)
  • 著者名/発表者名: Qi An，山川 博司，湖上 碩樹，吉田 和憲，王 若曦，山下 淳，淺間 一，石黒 周，下田 真吾，楊 濘嘉，山崎 弘嗣，園尾 萌香，Fady Shibata-Alnajjar，服部 憲明，高橋 幸治，藤井 崇典，乙宗 宏範，宮井 一郎，倉爪亮
  • 学会等名: 第38回日本ロボット学会・学術講演会
• [学会発表] Muscle Tension Analysis in Stroke Patient Sit-to-Stand Motion by Joint Torque-Based Normalization (2020)
  • 著者名/発表者名: Ruoxi Wang, Qi An, Ningjia Yang, Hiroki Kogami, Kazunori Yoshida, Hiroyuki Hamada, Shingo Shimoda, Hiroshi Yamasaki, Moeka Sonoo, Fady Alnajjar, Noriaki Hattori, Koji Takahashi, Takanori Fujii, Hironori Otomune, Ichiro Miyai, Atsushi Yamashita, and Hajime Asama
  • 学会等名: The 5th International Conference on NeuroRehabilitation (ICNR2020)
  • 国際学会
• [学会発表] Temporal Muscle Synergy Features Estimate Effects of Short-term Rehabilitation in Sit-to-stand of Post-stroke Patients (2020)
  • 著者名/発表者名: Ningjia Yang, Qi An, Hiroki Kogami, Kazunori Yoshida, Hiroshi Yamakawa, Yusuke Tamura, Shingo Shimoda, Hiroshi Yamasaki, Moeka Sonoo, Matti Itkonen, Fady Shibata-Alnajjar, Noriaki Hattori, Koji Takahashi, Takanori Fujii, Hironori Otomune, Ichiro Miyai, Atsushi Yamashita, and Hajime Asama
  • 学会等名: The 2020 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA2020)
  • 国際学会