宿主範囲の違いが全球分布の違いにつながるのか,宿主特異性のほぼない外生菌根菌種は全球的な分布を示すのかを検証するために,岐阜県胡桃島のシラカバーシラビソ混生林で外生菌根菌のサンプリングを行い,階層ベイズモデルを用いて得られた菌種の全球分布の推定を行った。その結果,裸子植物と被子植物の両方と共生する宿主範囲の広い外生菌根菌種は,裸子植物・被子植物いずれかのみと共生する宿主範囲が比較的狭い菌種と比べて全球分布が広くなる可能性があるものの,宿主範囲の広い菌種であっても宿主の影響を受けて分布が制限され,全球的な分布は示さない可能性が示唆された。 本研究の結果は,裸子植物と被子植物の両方と共生する宿主範囲の広い外生菌根菌種であっても,世界中の外生菌根性樹種には感染できず,従来考えられてきた宿主の系統関係以外にも,外生菌根菌と宿主の共生可能性を左右する要因がある可能性を示唆するものと考えられる。 また,並行して,接種実験を用いて,宿主の系統関係以外に外生菌根菌と宿主の共生可能性を左右する要因について明らかにする研究も行っている。特に,本研究では,宿主と外生菌根菌種の過去の分布パターンの相違 (すなわち,宿主と外生菌根菌種が過去,どのくらい同所的に分布していたか) の影響について検証することを目的に実験を進めている。外生菌根菌の感染にかかる時間も踏まえ,来年度に結果を得られるように,実生の準備と外生菌根菌の接種を行った。
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