本研究では、“光過敏症、低身長症や若年性発がんを引き起こす常染色体劣性遺伝病Bloom症候群の原因遺伝子BLMが細胞のゲノム安定性維持に関わるメカニズムを解明すること”を目的としている。 採用1年目では、BLMと他タンパク質の結合に着目し実験を行った。特に、“BLMと一本鎖DNA結合タンパク質RPAの結合に着目し、その結合が担うゲノム安定性維持の分子メカニズムを解明すること”を目的として、英国オックスフォード大学のAndrew Blackford博士と共同で実験を行った。BLMのRPAとの相互作用を介したDNA複製異常時の応答機構に関する成果をNature Communications誌に筆頭著者の一人として発表している。 採用2年目では、“BLMの二量体化能の役割”、“BLMと家族性乳がん原因遺伝子BRCA1との関係”という2点に着目して実験を行った。 BLMの二量体化能に関しては、豪州セントヴィンセント医学研究所のAndrew Deans博士、英国オックスフォード大学のAndrew Blackford博士と共同で実験を行った。その結果、BLMの二量体化能が細胞内でBLMが姉妹染色分体交換を抑制し、細胞が生存するために必要であることを明らかにし、Proceedings of the National Academy of Sciences誌に共著者の一人として研究成果を発表している。 BLMとBRCA1との関係に関しては、BLM-BRCA1が合成致死の関係であることを見出し、BLMがBRCA1変異がんの治療における有用な分子標的となり得ることを明らかにした。現在、合成致死が生じる分子メカニズムの解析をAndrew Blackford博士と共同で行なっている。
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