研究課題/領域番号 |
20J13631
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
財前 真理 東京大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | ニュートリノ振動 / 超新星爆発 |
研究実績の概要 |
本課題は、超新星爆発内部において大量に解放されたニュートリノ同士の相互作用によって引き起こされるニュートリノ集団振動の振る舞いを数値的に解き明かすことが目標である。ニュートリノ集団振動の数値計算モデルとしてはしばしばニュートリノの運動量空間分布に軸対称を仮定したものが採用されていた。当該年度では3次元運動量空間分布を考慮したモデルに拡張することで、実際の超新星爆発モデルにおいてニュートリノの非軸対称性の成長が新たなフレーバー変換を引き起こすことを示した。また一部の超新星爆発時刻において、軸対称性を仮定した場合では密度の高い背景物質によってニュートリノ集団振動が抑制されていたが、この非軸対称性の成長がその抑制効果を打ち破ることも確認された。 更にこうした数値計算結果の正当性を確かめるために、既存のフレーバー変換の発生の有無を評価できる線形安定性解析の手法をより正確なものへと拡張を行なった。既存の手法ではミュー型とタウ型をまとめて非電子型として扱う2フレーバーの枠組みを用いており、また一部のニュートリノ振動のパラメータを無視することで計算を簡略化していた。新しく改良した手法ではこれらを正確に取り扱うことで、非線形数値計算におけるフレーバー変換がどのような成長を経ていたかより明らかにすることができた。これまでに行われた非軸対称性についての研究はどれも背景物質やニュートリノのエネルギー分布などを考慮しなかったものであり、本研究は初めて実際の超新星爆発モデルに対して非軸対称性を考慮したニュートリノ集団振動を取り扱った研究である。本成果に関する論文はPhysical Review D にて査読され出版されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目標は超新星爆発内部において大量に解放されたニュートリノ同士の相互作用によって引き起こされるニュートリノ集団振動の振る舞いを数値的に解き明かすことである。しかしその効果について完璧に把握するするには計算コストが巨大すぎであり、未だに多くの仮定を課した物理モデルでしか行われていない。今年度行った非軸対称性に関する研究は計算コストが100倍近く膨れ上がるものではあったが、その仮定を1つ外すことに成功した第一歩となるものであり、その貢献は大きなものだと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
ニュートリノ集団振動の振る舞いの更なる解明を目指し、引き続きこれまで考慮してこなかった他の効果にも目を向けていく予定である。その中でもニュートリノと反ニュートリノの角度分布の違いが引き起こすfast flavor conversion(高速フレーバー変換)に注目する。このフレーバー変換の影響はいまだに殆ど線形安定性解析を用いた発生予測に止まっているため、非線形なフレーバー進化を数値計算を通して解明することを目指す。
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