研究課題/領域番号 |
20J13647
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
山田 宏樹 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | グラフ学習 / グラフ信号処理 / サンプリング |
研究実績の概要 |
本研究では、時間的に位置・関係性が変化するセンサから計測された大規模な時空間データを、信号の時変動構造を考慮しスパース表現する技術の開発を目指す。さらに、そのスパース表現を利用し、大規模時空間データの実問題への応用することを目的とする。令和2年度は時空間データ解析・圧縮のための基礎理論を構築する。具体的には、(課題1)大規模時空間データからの高速な時変動グラフ学習、(課題2)大規模時空間データのスパース表現に関する研究に取り組んだ。 高速な時変動グラフ学習では、伝統的な信号処理技術で利用されている多重解像度解析に着目した。信号が潜在的に有する時変動グラフは多重解像度分解によりスパースに表現することが可能である。そこで、大規模データから時変動グラフの多重解像度表現を直接学習することで、学習するパラメータを大幅に削減し高速にグラフを推定することを可能にした。この成果はAPSIPA2021に採択されている。また、この成果をより発展させた手法を論文誌への投稿予定である。 大規模時空間データのスパース表現に関する研究では、サンプリング行列の設計とグラフ信号の復元に取り組んだ。サンプリング行列の設計では、任意の部分空間に存在するグラフ信号に対し完全再構成を満たすサンプリングを実現するために、サンプリング行列を求める問題を凸最適化として定式化し、これを解くことにによって適切なサンプリング行列を求める手法を提案した。この成果はICASSP2021に採択されている。グラフ信号の復元では、凸最適化アルゴリズムを深層学習へ拡張した技術である深層展開を用いた手法を提案した。この研究成果もICASSP2021に採択が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではグラフ信号処理技術を利用した大規模時空間データのスパース表現の獲得を目指している。本年度は、時空間データ解析・圧縮のための基礎理論を構築しており。具体的には、(課題1)大規模時空間データからの高速な時変動グラフ学習、(課題2)大規模時空間データのスパース表現に関する研究に取り組んだ。 課題1では、大規模データから時変グラフの多重解像度表現を直接学習する手法を提案し、APSIPA2020に発表した。この手法により、時変グラフをスパースに表現可能とし、高速な時変グラフ学習を実現した。また、より発展させた手法については現在論文にまとめている。 課題2については、信号の部分空間に対する先験情報に基づいたグラフ信号のサンプリング行列の設計手法を提案し、ICASSP2021に採択が決定した。また、凸最適化アルゴリズムを深層学習へ拡張した技術である深層展開を用いたグラフ信号の復元問題に取り組み、この研究成果もICASSP2021に採択が決定している。 上記したように、予定していた課題に取り組み、研究成果がAPSIPA2020とICASSP2021に採択されており、発展させた手法についても順調に論文化が進んでいるため、期待通り研究が進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究では、大規模データから時変グラフの多重解像度表現を直接学習する手法を提案し、大規模時空間データのスパース表現を獲得することに成功した。この時変グラフに基づくスパース表現を利用して、従来の信号処理の知見をグラフ信号処理に拡張し、時空間データの圧縮およびノイズ除去に取り組む。具体的には一般化サンプリングのフレームワークをグラフ信号処理に拡張し、ロバストなグラフ信号の圧縮および復元を目指す。さらに本年度は、実際に動的な大規模時空間センシングデータ取得システムを構築し、取得した環境データを用いた実験を行う予定である。実センシングデータとして、LIDARスキャナを用いて動的な点群を取得し、点群データの圧縮・復元に取り組む。
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