研究課題/領域番号 |
20J13783
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大小田 結貴 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 星形成 / 化学組成 / ALMA / 機械学習 / アウトフロー / 低質量原始星 / IRAS 15398-3359 |
研究実績の概要 |
私はこの1年間、星形成初期段階の低質量原始星について、ALMAのデータ解析を元に以下の研究を進め、①と②を学術論文として出版した。 ① Principal Component Analysis (PCA) を用いた原始星周りの化学組成分布の解析 膨大なデータを効率的に解析する方法として、機械学習の1つである主成分分析に着目し、その有効性を確かめるため、おおかみ座にあるClass 0原始星天体IRAS 15398-3359周りの化学組成分布に適用した。15種類の分子輝線と連続波に対して、アウトフローを含む数1000 auスケールと原始星付近数100 auスケールという2つのスケールにPCAを適用し、分子分布の特徴を先入観なく捉える方法として有効であることを示した。 ② 非常に若い原始星IRAS 15398-3359で捉えたアウトフローの方向変化 上記の天体において、以前の観測で捉えていた北東から南西に伸びるアウトフロー構造と垂直な方向に伸びる新たなアウトフローを捉えた。H2COとC18Oでは、原始星付近で北西から南東に細く伸びる構造を示し、H2COではさらにその構造に続いて伸びるアーク構造が見られた。アーク構造は、衝撃波領域をトレースするSOやSiO, CH3OHでも見られる。このことから、この構造が衝撃波領域であることがわかった。理論研究者との共同研究を進め、観測された衝撃波領域の速度が遅いことから新たに捉えた構造が過去のアウトフローであることを示した。このように、非常に若い原始星で原始星進化に伴うアウトフローの方向変化を初めて観測的に示し、原始星初期の激しい活動性を提示した。 ①の研究をさらに発展させ、低質量原始星L483の23種類の分子輝線の3次元データにPCAを行い、化学組成分布の相違を見出した。現在論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
COVID-19の影響により、当初観測予定であった、IRAS15398-3359の高感度高分解能観測は延期され円盤構造の研究を進めることは困難となった。しかしこの誕生したばかりの原始星において、2つのアウトフローを発見した。この発見により、原始星初期の形成が明らかになりつつある。このようなアウトフローを発見することは予想外であった。また明らかになってきた最初期の星形成は、全く新しい描像であり、理論分野に新たな問いを掲げる結果となった。これは、星と惑星系の共進化描像の理解につながる。また円盤構造を調べる上でも重要な結果と言える。このように予定していたより大きく星惑星系初期の理解を深めている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から、低質量原始星L483の化学組成分布の特徴を解析している。現在、23種類の分子輝線データに3次元のPCAを行いこの結果を論文としてまとめている。今後PCAを膨大な分子輝線データに活用する。ALMAのLargeプログラムでは13個の天体を観測し、1天体あたり20本以上の分子輝線を観測している。このデータにPCAを適用し、原始星周りの化学進化に迫る研究を進めたい。 また、IRAS15398-3359で発見した過去のアウトフローの詳細を調べる。すでに構造が時間経過により散逸しているため、13COや感度を上げた観測を行い全体像を捉える。また、アウトフローの方向変化の起源を探究するために、H13CO+やN2H+で原始星コアの回転運動を調べる。この観測をALMAに観測提案している。この研究によってさらに原始星最初期の形成の理解を深める。 新たに低質量原始星B335の解析も進めている。この天体もIRAS15398-3359と同様に非常に若い超低質量原始星として知られている。原始星円盤やその周辺の化学組成を解析し、IRAS 15398-3359との比較を行う。共進化描像の確立に向けた第一歩である。
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