研究課題/領域番号 |
20J13853
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中迎 菖平 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 天然物 / 共生微生物 / カイメン / RNA-seq / スクリーニング / バイオインフォマティクス / 水産 / 培養 |
研究実績の概要 |
本研究は、創薬研究の制約となっている化合物提供量の不足に対し、多くの天然物を保有することで知られているカイメン動物の、保有化合物の真の生産者であるカイメン共生バクテリアを培養を試みることで解決を図るとともに、未利用水産資源であるカイメン動物の友好的な利用を促進する。研究対象には、多くの有用天然物の生合成遺伝子の存在が確認されている、カイメンTheonella swinhoeiの共生微生物Entotheonella sp.を用いる。このバクテリアはカイメンのみに確認されており、いまだ培養法は確立していない。そこで、いくつかの方法から培養を試みた。1つ目は、Entotheonella sp.が生きている環境で培養を行う方法である。Entotheonella sp.を半透膜に封入し、それをカイメンに埋め込むことで、カイメンから供給されるEntotheonella sp.の生育因子を半透膜を通してEntotheonella sp.が受け取ることができる。しかし、この方法ではEntotheonella sp.を培養することができなかった。2つ目は、培地の炭素源と耐性抗生物質のスクリーニングである。先行研究に、バクテリアに適した炭素源と抗生物質を選択することができれば、目的のバクテリアを特異的に培養することが可能となるという報告がある。そこで、約30種類のアミノ酸や糖類のスクリーニングと、約10種類の抗生物質のスクリーニングを行った。しかし、いずれの条件でもEntotheonella sp.を培養することはできなかった。最後に、Entotheonella sp.が必須としている培養条件を検討するため、Entotheonella sp.の転写物をRNA-seqにより解析した。しかし、Entotheonella sp.からRNAを取り出す作業に難航しており、現在も条件を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Entotheonella sp.をカイメン内で培養する実験は、半透膜の中にEntotheonella sp.を封入したものの、2か月後には最初に封入した分も含めて確認できなくなっていた。これは、半透膜内での他のバクテリアや珪藻の増殖により、Entotheonella sp.の増殖が阻害されたためと考えられた。続いて培地のスクリーニングを行ったが、いずれの条件でもEntotheonella sp.の増殖は認められなかった。これも、他の増殖速度の速いバクテリアによりEntotheonella sp.の増殖が阻害されてしまったためと考えられる。いくつかの条件では他のバクテリアの増殖を抑えることができたが、光学顕微鏡による観察で、Entotheonella sp.は分解はせずとも増殖はしていないことが確認された。続いてEntotheonella sp.の転写物を得ることを試みたが、Entotheonella sp.は固い膜に覆われているため、RNAを単離することに難航した。RNA-seqの解析に十分な量を得ることはできたが、解析の結果、いずれも除去しきれなかったribosomal RNAが多く。有用な情報は得られなかった。 また、新型コロナウイルスの影響で、Entotheoenlla sp.の宿主であるカイメンTheonella swinhoeiを採取できる八丈島に赴くことや、現地の実験所での作業が困難となっていることも、進捗の遅れの原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
RNAの単離に関して、これまではEntotheonella sp.を液体窒素によって凍結した後、ビーズビーターを用いて膜を破砕することを行ってきたが、酵素による膜の分解を試みる。酵素の条件は、先行研究にある通りの条件で行う。得られた結果に対してバイオインフォマティクスによる解析を行い、Entotheonella sp.の生育に必要な炭素源と耐性抗生物質の検討を行い、Entotheonella sp.の培養を目指す。
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