研究課題
本研究は高齢者の認知機能低下のリスクと関連することがそれぞれ明らかとなっている食事と睡眠の認知機能に対する複合効果を検討することが目的である。今年度は①地域在住高齢者の食品摂取の多様性と睡眠の質の縦断的な関連、②認知機能と生活機能に対する睡眠の質と食品摂取の多様性の関連を検討した。①では70歳以上の地域在住高齢者を対象に2年間の縦断データを使用した。食品摂取の多様性は10食品群の摂取頻度から評価されるDietary variety score(以下、DVS)を、睡眠の質は睡眠効率の値を使用した。解析対象者は450名であり、縦断関連の検証には共分散構造分析の交差遅延効果モデルを用いた。DVSと睡眠の質の両方の影響関係を同時に検討した結果、食品摂取の多様性が睡眠効率に影響を及ぼす可能性が示唆された。②では70歳以上の地域在住高齢者を対象に、認知症発症過程で低下する認知機能と生活機能を測定するThe Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System-21 items(以下、DASC-21)を用いて、DASC-21に対するDVSと睡眠効率の関連を検討した。解析対象者は948名であり、解析ではDVSと睡眠効率の値がいずれも不良群、いずれか良好群、いずれも良好群の3群に分け、DACS-21の得点を比較した。地域在住高齢者において多様な食品摂取と睡眠効率が共に良好であることは、認知機能と生活機能が良好であることと関連していた。今年度の研究結果は、日本人高齢者を対象とし、認知機能と生活機能に対する食品摂取の多様性および睡眠の質の関連を検討した最初の研究である。将来的に認知症発症もしくは認知機能の低下リスクに効果的な介入プログラムを構築することで、早期からの認知症対策に貢献する一助になり得ると考える。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Clinical Nutrition ESPEN
巻: 41 ページ: 391-397
10.1016/j.clnesp.2020.10.013