研究課題
2021年度は薄膜の深さ方向に伝導帯エネルギー傾斜構造をつけた高効率CTS系太陽電池の実現を目指し、Cu2(Sn1-xGex)S3(CTGS)薄膜に関する研究を遂行した。特にCTGS薄膜のGe/(Ge+Sn);x比の増加とともに表面凹凸が激しくなってしまう原因とその制御方法を明らかにするために、レーザー顕微鏡による表面粗さ(RMS)の測定などを行うことにより、x組成や成膜方法などがCTGS薄膜の表面形態へ与える影響を調査した。Ge層を堆積した金属前駆体に対して硫化処理を行うことにより作製したCTGS薄膜はx比が高くなるとともにRMS値も増加することが確認された。この原因を調査するために薄膜の成膜過程における途中生成物に着目し、XRD測定を用いて硫化温度を変化させた際の各過程の生成物を調査した。その結果、CTGS薄膜の凹凸が激しくなり始める硫化温度においてCu-Ge-S化合物などの異相が生じることが確認され、この異相の形成がCTGS薄膜の表面形態に影響を及ぼす要因であることが示唆された。従って、この異相を抑制することが平坦性の高い薄膜の形成には重要であることが分かった。従来の研究によりx比が高くなるとCTGS薄膜表面の凹凸が激しくなることは知られていたが、実際の表面凹凸に対しRMS値を算出することで定量化し、途中生成物とともに議論したのは本研究が初めてである。さらに、表面粗さを抑制する改善方法として、安定なCTS薄膜を成膜した後、Ge-S雰囲気中でGe拡散する方法が本実験の中で最も高い表面平坦性を持ち、かつ粒界も抑制された光吸収層に適したCTGS薄膜が得られることも明らかにした。以上の成果より、将来的に高効率エネルギー傾斜CTS系太陽電池を実現する上で重要な知見を明らかにし、CTSやCTGSのみならず硫化物半導体の研究においても貢献することが出来た。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Solar Energy Materials and Solar Cells
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