研究課題/領域番号 |
20J14019
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
戸田 広樹 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | エネルギーキャリア / アンモニア / 酸化反応 / マンガン / サレン配位子 / 電気化学的酸化反応 |
研究実績の概要 |
近年、発電した電力を化学物質の形で貯蔵し、運搬するエネルギーキャリアエネルギーキャリアの候補として、取り扱いの容易さ、高いエネルギー密度などの利点を持つアンモニアが注目されている。ごく最近、遷移金属錯体を用いたアンモニアの酸化反応として、ルテニウム錯体を用いた触媒反応が数例報告されている。一方で資源量が豊富に存在する卑金属元素を用いたアンモニア酸化反応は、Petersらによって報告された鉄錯体の1例のみに留まっている。 2020年度は、卑金属元素としてサレン配位子を有するマンガン錯体を用いた触媒的なアンモニア酸化反応について検討を行った。サレン配位子を有するマンガン錯体は、オレフィンのエポキシ化反応をはじめ、種々の酸化反応の触媒として働くことが知られており、アンモニア酸化反応にも触媒活性を有することが期待できる。 その結果、触媒としてマンガンサレン錯体、アンモニア源としてアンモニウムトリフラート、酸化剤としてアミニウムラジカル、塩基としてコリジンを用いた反応において、錯体あたり17.1当量の窒素の生成を確認し、触媒的なアンモニア酸化反応が進行することを見出した。また、反応機構に関する検討も実施し、中間体の合成と量論反応について行った。マンガンサレン錯体とアンモニアを反応させることで対応するマンガンアンモニア錯体を収率36%で得ることに成功した。加えて、アンモニア錯体の量論反応において、外部からのアンモニアの添加が窒素生成に必須であることが明らかとなった。この結果から、アンモニアの求核攻撃によって窒素分子の窒素間結合が生成していることが示唆された。また、本反応系は、電気化学的酸化条件下でも反応が進行し、錯体あたり12当量の窒素を確認した。加えて、ファラデー効率は95%と高効率であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度においては、マンガンサレン錯体を用いた触媒的なアンモニア酸化反応を達成した。本反応は、マンガン錯体を用いた触媒的なアンモニア酸化反応の初めての例である。加えて、電気化学的酸化条件下においても触媒反応が進行することを確認した。触媒反応の開始電位は卑金属元素である鉄錯体を用いた反応系よりも低い値を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に得られたサレン配位子が触媒的なアンモニア酸化反応に有効な配位子であるという知見を踏まえて、サレン配位子を有するコバルト錯体やクロム錯体を用いた触媒的なアンモニア酸化反応の開発に取り組む。加えて、本反応系でサレン配位子を有するマンガンイミド錯体が生成していることが示唆されていることから、アンモニアを直接窒素源として用いた触媒的なアジリジン合成反応についても検討を行う。
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