研究課題/領域番号 |
20J14049
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠山 幸也 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 振動発電 / 広帯域発電素子 / 整流昇圧回路 |
研究実績の概要 |
本年度は広帯域MEMS振動発電素子の試作と、微小な発電電力を回収可能な発電素子用電源回路の性能評価に取り組んだ。従来より理論検討を行っていた、入力振動あたりの発電電流を高めることにより広帯域特性を達成するエレクトレット型振動発電素子について、クリーンルームを用いて試作を行い、SOIより構造を作製することに成功した。密度の高い櫛歯構造を用いて広帯域特性を実現する設計上、従来のデバイスと比較してアスペクト比の大きい機械構造の実現が不可欠であった。該当箇所を作製する深堀りエッチングの条件を精査することで設計通りの構造を実現し、周波数特性等の機械的な性能の実測結果を、解析モデルによって説明できることを確認した。 発電素子と組み合わせる電源回路関連では、電圧が微小な発電素子の出力を回収することが可能な低閾値の整流昇圧回路について、発電素子の利用帯域を向上させるような回路構成の検討をシミュレータを用いて行った。従来に試作・測定を行ってた低閾値の整流昇圧回路の基本回路構成に加えて、トランジスタの閾値補償を採用した回路構成を採用して設計・比較検討を行った。回路シミュレータ上でMEMS振動発電素子と組み合わせた性能を見積もるために電気機械統合解析を実施した結果、従来回路と比較して昇圧後の出力電圧の最大値とトレードオフとして共振から離れた周波数における到達電位が向上し、結果としてさらなる動作帯域の向上が可能であることがわかった。本回路は必要な電源電圧が1Vなど小さい場合に有用であると考えれられる。また、すでに試作・性能測定を行っている整流昇圧回路を使用した振動発電素子の帯域向上効果と微小非定常振動下における昇圧に関する成果に関してそれぞれ論文としてまとめ、投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広帯域の振動発電素子に関して、試作条件を精査することにより機械構造の作製プロセスの確立することができ、また設計の解析条件を実測結果と比較しその妥当性を検証することに成功した。パラメタを変更した場合などさらなる試作を重なる必要があるが、基本的な部分に関しての検討は達成したと判断できる。 また発電素子と組み合わせる電源回路に関しては、本年度測定予定であった負荷回路に相当するLSIの測定がファウンドリの都合による試作の遅れにより次年度に持ち越した一方、電源回路部分に当たる低閾値の整流昇圧回路に関してさらなる広帯域化手法の検討を行い、試作済み回路の帯域向上効果と環境振動下における昇圧性能に関して成果をまとめ論文を投稿するなど、順調に研究を進めている。 以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
広帯域振動発電素子に関しては、発電に係るパラメタや搭載するおもりの質量を変化したデバイスを試作・測定し、提案している広帯域発電素子の設計手法に関して理論を補強する予定である。現状の試作においては、デバイス構造の細かさから試作中の不純物が問題になり、歩留まりが低いことが問題であった。今年度は試作プロセスの改善に取り組み、設計パラメタを変更した複数のデバイスの試作・評価を目指す。また、それとともに実際の想定使用環境の振動のもとで発電素子の性能を評価し、当環境におけるエレクトロニクス駆動に向けたデバイス設計指針を確立する。 発電素子と組み合わせる回路に関しては、設計を行っていた負荷回路を含むLSIの単体性能と、発電素子と組み合わせた際の性能を測定し、環境振動下における常時自立駆動の可能性を検討する。測定結果をもとに常時動作に向けた回路の改善案を示し、解析または実測により評価を行う。
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