昨年度に引き続き、発電機構の構造密度を高め、電気的なダンピングを増強することによる広帯域振動発電素子のデバイス施策及び評価に取り組んだ。発電素子のデザインを見直すことで試作プロセス上のMEMSの深堀りエッチング構造のアスペクト比を変更するなど製作条件を緩和し、特性評価用のデバイスを実現した。評価用デバイスの外部振動印加時の機械特性、及び負荷接続時の電気的な周波数特性の測定を行った。その結果、出力端子につける負荷の大きさを変更することで発電量の周波数特性が変化し、30 Hz ほどの共振周波数のシフトを伴いながら帯域を変化することが確認できた。この結果は広帯域特性を持つ振動発電素子の設計のみならず、接続する後段回路によって共振周波数を大幅に変化させるシステムの可能性を示唆する結果である。また、発電に関わるエレクトレットの帯電電位を変化させることにより、最も帯域の広くなる条件間において 30 Hz 程度帯域が向上することが確認できた。こちらの結果により、これまで理論的な静電モデルと電気回路シミュレータ上の等価回路モデルを用いたシミュレーションを用いて提案していた広帯域発電素子の設計手法を実証した。 また、これまで取り組んだ微小な電圧の発電量の回収を可能とする低しきい値の整流昇圧回路についての実験結果を学術論文としてまとめ、投稿・採択された。従来の共振型発電素子と整流昇圧回路を組み合わせることで微小非定常振動のもとでの昇圧性能が向上した結果、及び発電素子の帯域の向上した結果をそれぞれ投稿し、原著論文として採択されている。以上より、発電素子と後段回路それぞれで発電特性の広帯域化を実現する手法を示し、回路を含めた発電システムとして広帯域性能を実現するための方法論を提案したといえる。
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