研究実績の概要 |
当該年度、加齢による行動学的評価・脳内環境の変化と、認知機能低下に対する予防的運動介入による行動学的変化と脳内作用機序を明らかにした。 老化促進マウスSAMP8を用い、経時的に運動機能(Rota-Rod耐久試験)、自発的活動性(open field試験)、認知機能(新奇物体認識試験)を評価し、組織学的に活性化アストロサイトのマーカーGFAP、活性化ミクログリアのマーカーIba-1、神経細胞のマーカーNeuNを調べた。SAMP8は9ヶ月齢で運動機能、自発的活動性、認知機能低下が明らかとなった。また、GFAP、Iba-1の発現増加と、NeuN陽性神経細胞数の減少が観察された。 上記の結果をもとに、SAMP8を無作為に運動群、非運動群に分け、7か月齢より予防的に運動介入を行った。SAM系のコントロールとして非運動群SAMR1を用いた。運動介入としてRota-Rod運動(25rpm/min、15分/日、5回/週)を10週間行った。また、上記と同様の行動学的評価とGFAP、Iba-1、NeuN、脳由来神経栄養因子(BDNF)、障害性アストロサイトアストロサイトのマーカー(C3)、保護性ミクログリアのマーカー(arginase-1)、炎症性サイトカイン(TNF-α)、一酸化窒素合成酵素(iNOS,nNOS,p-eNOS)を免疫組織化学染色とwestern blottingを行った。 運動により行動学的評価の低下が抑制された。免疫組織化学染色の結果、運動はGFAP,Iba-1発現を有意に抑制した。また、BDNFとNeuN陽性神経細胞数減少を有意に抑制した、western blottingの結果、運動はTNF-α、iNOS、nNOS、C3発現を有意に減少した。 これらの結果より予防的運動介入はグリア細胞の分極により、酸化ストレス、神経炎症の抑制に関与していることが示唆された。
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