研究課題
本研究課題において、我々は、加齢による認知機能低下に対し、低強度のバランス・協調運動(Rota-Rodトレッドミル運動)の予防効果とそのメカニズムについて検討した。認知症モデル動物として老化促進マウス(SAMP8)を用いて、ミクログリア(Iba-1)、アストロサイト(GFAP)の発現動態と役割、一酸化窒素合成酵素(NOS)アイソフォーム、神経栄養因子(BDNF)、炎症性サイトカイン(TNF-α)の発現に着目した結果、認知症発症前(7か月齢)からのRota-Rodトレッドミル運動は、認知症発症時(9か月齢)におけるミクログリア、アストロサイトの発現を抑制し、グリア細胞の過剰活性により惹起されたiNOS、nNOS、TNF-αの発現を減少し、海馬CA3領域でBDNF発現が増加することが示唆された。さらに興味深いことにRota-Rodトレッドミル運動は障害性アストロサイトのマーカーであるC3補体タンパクの発現を減少することを明らかとした。当該年度は、予防的運動介入を臨床応用すべく、Rota-Rodトレッドミル運動をいつから、どれくらいの期間実施することが、最も高い認知症予防効果を示すのか、また細胞内応答が異なるのかについて検討した。具体的には、3か月齢から9か月齢までを2か月周期で早期(3-5か月齢)、中期(5-7か月齢)、後期(7-9か月齢)と区分し、SAMP8を長期運動群(3-9か月齢まで運動介入)、早期(3-5か月齢)運動介入群、中期(5-7か月齢)運動介入群を設定し、運動介入を行い、行動学的評価、組織学的、生化学的検討を実施した。その結果、長期運動介入群では非運動群と比較して、グリア細胞の過剰活性が抑制され、BDNF発現が有意に増加した。また、運動の持続効果については早期運動介入群、中期運動介入群では、運動終了後の時間依存的に予防効果が減少することが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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