研究課題
プラスミドとは、宿主細菌の生育には必須ではない環状DNAであり、その保持は汚染物質分解能や薬剤耐性能といった幅広い形質を宿主に付与する。また、その保持は宿主に生育負荷(生育する上でのハンディキャップ)を与えることが通説とされてきた。ところで、申請者は環境細菌Pseudomonas resinovorans CA10dm4株がプラスミドを保持しても生育負荷を感じない「プラスミド非感受性」であることを見出した。そこで、トランスポゾン変異により「プラスミド感受的」に変化した変異株を取得し、各種解析を適用することで、新規性質の分子機構の解明を目指した。まず、変異株をRNA-Seqに供した結果、硫黄代謝に関与する複数種のオペロンの転写抑制が観察された。Pseudomonas属細菌を含むグラム陰性細菌では、これらオペロンは転写制御因子CysBの制御下にある。そこでCysBに着目し、cysB破壊株を用いたRNA-Seq解析によりCA10dm4株のCysBレギュロンを同定したところ、CysBレギュロン全体の転写抑制が変異株で生じていた。つまり、変異株においてCysBの転写活性化能が低下した、つまりプラスミド非感受性の発揮にはCysBの転写活性化能が必須であることが明らかになった。また、CysBレギュロンには三つの転写制御因子(SpiR1, 2, 3)が含まれる。このうち、SpiR3がプラスミド非感受性の発揮に直接的に関与することを実証した。また、CysBの直接の制御下にSpiR1, 2が、さらにその下流にSpiR3が存在するような階層構造を各種解析を通じて実証した。プラスミド非感受性の発揮に、硫黄代謝を司るCysBが必須であるという知見は非常に新規性が高く、今後のさらなる進展が期待される。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Frontiers in Microbiology
巻: 11 ページ: 1328
10.3389/fmicb.2020.01328