本年度は、第一には、引き続き、これまで実施してきたフィールドワークにおいて収集したデータ整理を行った。また、こうしたデータ整理の一環として映像制作を行い、その成果を「Second Life in Peru/通り過ぎないもの」 (映像上映・日本文化人類学会第56回研究大会)として発表した。加えて、以下で記すような理論的検討において明らかになったデータの不足を補うために、東京と京都で料理人のインタビューを実施した。 第二には、フィールドワークを通して浮かび上がった問題関心に応じて、文献研究を行った。特にペルーのモダンガストロノミーを織りなす糸と言える、料理、食、科学技術、芸術、グローバリゼーション、倫理、自然についての人類学的研究についての文献を読み込んだ。 第三には、それらの研究成果に即して、博士論文の土台となるような文献発表を行った。「料理による「表現」はいかに可能か?:ペルーの現代料理レストランにおける表現するための手がかりの思考」(日本文化人類学会第56回研究大会)においては、おいしさと、おいしさ以外でセントラルにおいて目指されている価値の関係とその効果について考察した。また、「グローバルにローカルなものを目指して:ペルーの現代料理の理想と矛盾」(第123回現代人類学研究会)ではセントラルで目指すおいしさ以外の価値である「ローカル性」について、それと一般に対比される「グローバル性」との入り組んだ関係とその効果について考察した。 同時に、平野紗季子によるインタビュー「現代料理はどこへ向かうのか?」(『RiCE』2022年5月号)、「ペルーの現代料理レストラン セントラルにみる料理創造の過程と理論 料理人はどのように料理を創造するのか」(おいしい未来研究所)では、これまでの研究生活を広く発信するような活動を行なった。
|