研究課題/領域番号 |
20J14253
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
高山 幸也 東京理科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 細胞表面修飾 / がん治療 / 単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ / バイスタンダー効果 / 細胞動態 / ポリエチレングリコール |
研究実績の概要 |
本研究は、様々な種類の腫瘍組織に集積することが報告されている間葉系幹細胞に新たな機能を付与することにより、間葉系幹細胞を基盤としたがん標的治療法を開発することを目的とする。2020年度は、ドキソルビシン封入リポソーム(DL)の細胞表面修飾と、アポトーシス誘導剤ガンシクロビルをリン酸化する単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(TK)遺伝子の導入により、間葉系幹細胞を機能化した。マウス間葉系幹細胞株C3H10T1/2細胞にTK遺伝子を導入した後、アビジン-ビオチン複合体法を用いてDLを細胞表面に結合させることで、DL修飾TK発現C3H10T1/2(DL-C3H10T1/2/TK)細胞を調製した。DL-C3H10T1/2/TK細胞をホタルルシフェラーゼ発現マウス結腸癌細胞株colon26/luc細胞と共培養したところ、ガンシクロビルを添加することでcolon26/luc細胞に対して高い細胞増殖抑制効果を示した。また、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株UE7T-13細胞も同様に、DLの修飾とTK遺伝子の導入により相乗的ながん細胞増殖抑制効果を示した。この結果から、DL修飾とTK遺伝子導入による抗腫瘍活性の増強はヒト由来間葉系幹細胞にも応用可能であることが示された。また、間葉系幹細胞の体内動態制御を目的に、細胞表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾し、血管内皮細胞への接着ならびに静脈内投与後の肺塞栓の形成に対する抑制効果を評価した。その結果、C3H10T1/2細胞表面をPEGで修飾することにより、マウス血管内皮細胞への接着が顕著に抑制された。また、PEG修飾C3H10T1/2細胞をマウスに静脈内投与したところ、未修飾C3H10T1/2細胞と比較して肺への移行率は有意に低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドキソルビシン封入リポソームの細胞表面修飾や単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ遺伝子の導入により間葉系幹細胞の機能化に成功するとともに、間葉系幹細胞表面をポリエチレングリコールで修飾することで移植後の体内動態制御にも成功するなど、本年度予定していた計画内容を概ね遂行できたため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は当初の計画通り、担がんマウスを用いてDL-C3H10T1/2/TK細胞とガンシクロビル投与による抗腫瘍効果を評価する。具体的には、ホタルルシフェラーゼ発現マウス結腸癌細胞株colon26/luc細胞をBALB/c Slc-nu/nuマウスの尾静脈内に接種することで作製した肺がんモデルマウスに、DL-C3H10T1/2/TK細胞およびガンシクロビルを投与し、in vivoイメージングシステムを利用して抗腫瘍効果を評価する。
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