研究課題
本研究では、脂肪組織のミトコンドリアに存在し、熱産生を介して全身のエネルギー消費に寄与する脱共役タンパク質1 (UCP1) の発現調節に寄与する遺伝子を探索し、新規UCP1発現調節遺伝子を見出すことを目的としている。本年度は、前年度に作製した、UCP1転写活性が培養上清のルシフェラーゼ活性測定により評価可能な白色脂肪組織由来レポーター脂肪細胞株 (Ucp1-secNLuc iWAT) を用いてUCP1転写調節に寄与する遺伝子のスクリーニングを行った。作製したレポーター細胞株に対してCRISPR/Cas9ノックアウトガイドRNAライブラリーを導入し、1細胞につき1種のガイドRNAを有するUcp1-secNLuc iWATを作製した。ライブラリーを導入したUcp1-secNLuc iWAT 1000個からなる細胞集団計1942個に対してβ-アドレナリン受容体アゴニストisoproterenol (iso) 添加前後のluciferase活性を測定した。その結果、非刺激時のUCP1転写活性またはisoへの応答性が変化した細胞集団が見出された。活性が変化した細胞集団に含まれるガイドRNAの種類と比率を推定するため、ゲノムDNA上のライブラリー由来配列に対して次世代シーケンス解析を行った結果、1つの細胞集団中に約1000種のガイドRNAが様々な比率で含まれていることが確認された。このガイドRNAの中で、特定の活性変化を示した細胞集団において増加したガイドRNAの種類を特定するため、大阪大学大学院情報科学研究科の松田秀雄教授、瀬尾茂人准教授らの協力のもと統計学的解析を行ったところ、13種のガイドRNAが有意に増加しており、これらのガイドRNAが標的とする遺伝子が非刺激時のUCP1転写活性またはβ-アドレナリン刺激に対する応答性の調節に寄与する候補遺伝子として選抜された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 86 ページ: 380~389
10.1093/bbb/zbab216