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2020 年度 実績報告書

植物成長調節物質である"フェアリー化合物"が植物ホルモンであることの証明

研究課題

研究課題/領域番号 20J14421
研究機関静岡大学

研究代表者

竹村 太秀  静岡大学, 自然科学系教育部, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2022-03-31
キーワードフェアリーリング / プリン代謝 / イネ / 植物ホルモン / 生合成 / 天然物化学
研究実績の概要

芝草がリング状に繁茂あるいは枯死する現象は「フェアリーリング」という名前で知られている。当研究室ではこの原因物質として2-azahypoxanthine (AHX)、imidazole-4-carboxamide (ICA)、及び2-aza-8-oxohypoxanthine (AOH)の同定に成功し、フェアリー化合物(FCs)と命名した。更に、FCsは様々な植物に対して成長調節活性を示すほか、分析を行ったすべての植物に内生していることが明らかとなった。そのため、FCsが新たな植物ホルモンの可能性があり、その証明に並んでFCs生合成経路の解明を目的とした。
FCsはプリン代謝の中間体である5-aminoimidazole-4-carboxamide (AICA) から生合成されることが判明しているが、既知のプリン化合物を参考に、リボヌクレオチドを介した新たな生合成経路を推測した。そこで、大腸菌を宿主として推定したタンパク質を異種発現した結果、hypoxanyhine-guanine phosphoribosyltransferase(HGPRT)及びadenine phosphoribosyltransferase(APRT)がFCsに対して活性を有することを発見し、リボヌクレオチドを介したFCsの新たな生合成経路・酵素の存在が明らかとなった。
また、FCsを処理したシロイヌナズナを用いて定量分析を行ったところ、上述の経路及び当研究室が明らかにしてきたFCs生合成経路がシロイヌナズナに存在することが明らかとなり、FCsの生合成経路が植物に共通して存在することを強く示唆している。さらに、FCs処理によって抗酸化物質である尿酸やアラントイン含量が大きく変化すること、これまで確認されていなかったFCsの代謝が存在することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

FCsの生合成経路としてリボヌクレオチドを介した経路を推定し、HGPRT及びAPRTが当該経路に関与することがin vitro及びin vivoから明らかとなった。一方で、AHXとICAが生体内で相互に変換していることを定量分析及びタンパク質実験から見出した。両化合物間の変換は窒素分子を伴う変換であることから、変換を触媒するタンパク質を同定することで、FCsの更なる機能解明が期待できる。

今後の研究の推進方策

令和2年度までの進捗状況にも記したように、植物体内でAHXとICAが相互に変換することが強く示唆されたため、本反応を触媒するタンパク質の単離・同定を試みる。昨年度までに、イネ培養細胞から抽出した酵素液で活性が確認できているため、スケールアップを行い活性を指標に検討を行う。
また、FCsは様々なストレス応答に関与するほか、FCs処理によってプリン代謝などの主要経路の化合物含量に影響を与えることが明らかになった。そのため、より効率的なFCs分析法の確立を試み、様々なストレス条件下で培養したイネにおけるFCsやFCs代謝産物、植物ホルモン、プリン代謝化合物などの網羅的定量からFCsの機能解明を進める。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Biosynthesis of the Fairy Chemicals, 2-Azahypoxanthine and Imidazole-4-carboxamide, in the Fairy Ring-Forming FungusLepista sordida2020

    • 著者名/発表者名
      Ito Akinobu、Choi Jae-Hoon、Takemura Hirohide、Kotajima Mihaya、Wu Jing、Tokuyama Shinji、Hirai Hirofumi、Asakawa Tomohiro、Ouchi Hitoshi、Inai Makoto、Kan Toshiyuki、Kawagishi Hirokazu
    • 雑誌名

      Journal of Natural Products

      巻: 83 ページ: 2469~2476

    • DOI

      10.1021/acs.jnatprod.0c00394

    • 査読あり
  • [学会発表] シロイヌナズナにおけるフェアリー化合物の生合成に関連した新規プリン代謝の解明2021

    • 著者名/発表者名
      竹村太秀,谷口有希,崔宰熏,平井浩文,菅敏幸,本橋令子,河岸洋和
    • 学会等名
      日本農芸化学会
  • [学会発表] シロイヌナズナにおけるフェアリー化合物の生理機能の解明2021

    • 著者名/発表者名
      谷口有希,Sooyeon Park,岩本耕太郎,菅敏行,竹村太秀,崔宰薰,謝肖男,河岸洋和,本橋令子
    • 学会等名
      植物生理学会
  • [学会発表] コムラサキシメジ菌糸体によるフェアリー化合物産生のための至適培養条件の探索2021

    • 著者名/発表者名
      小堀一,竹村太秀,呉静,多田有人,河岸 洋和
    • 学会等名
      日本農芸化学会

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公開日: 2021-12-27  

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