研究課題/領域番号 |
20J14485
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
向井 八尋 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 内在性ウイルス / ボルナウイルス / RNA結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、miEBLN-1の機能解析を通して、「ボルナウイルス由来遺伝子の宿主進化における生物学的意義」を明らかにすることを目的とする。さしあたって今年度は、miEBLN-1のRNA結合タンパク質としての機能をさらに詳細に明らかにするため、以下の2点の解析を行った。 miEBLN-1タンパク質のRNA配列モチーフを同定するため、Quick-irCLIP (Cross-linking immunoprecipitation) を行った。具体的には、レトロウイルスベクターをコウモリ細胞に感染させることで作成したmiEBLN-1タンパク質恒常発現コウモリ細胞を用いて抗miEBLN-1抗体による免疫沈降を行い、miEBLN-1タンパク質に結合するRNAを精製した。精製RNAを次世代シークエンサーに供した結果、poly-A配列が結合モチーフとして同定され (右図参照)、miEBLN-1がmRNAに特異的に結合していることが示唆された。 よって次に、「miEBLN-1がmRNAに結合することでコウモリ細胞内での発現叢を制御している」という仮説を検証するため、miEBLN-1タンパク質発現下における発現差異解析を行った。その結果、miEBLN-1タンパク質の発現によって51の遺伝子の発現量に有意な変動が検出された。これらの発現変動遺伝子群の背景にある生物学的機能を同定するため、DAVIDによるGO (Gene ontology) 解析を行った。その結果、膜タンパク質や細胞間接着に関する遺伝子が有意に含まれていることが明らかとなり、miEBLN-1が転写後調節によって膜タンパク質の発現を制御していることが示唆された。 以上の結果から、miEBLN-1がRNA結合タンパク質として機能する分子基盤の一端が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、miEBLN-1の詳細な機能とその分子機構の解明を目標として、次世代シークエンサーを用いた解析をはじめとした種々の実験を行った。その結果、当初の計画にあった「miEBLN-1タンパク質が結合する標的RNAの特定」にこそ至らなかったものの、miEBLN-1が宿主遺伝子のmRNAに結合して発現量を制御していることを示唆する結果を得た。よって、計画目標であるmiEBLN-1の機能解明はおおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度得られた結果をベースに解析を進め、「miEBLN-1タンパク質が担う機能」と「miEBLN-1がコウモリの進化に果たした影響」について全容の解明を目指す。具体的には、miEBLN-1タンパク質が宿主遺伝子の発現を制御する分子基盤の解析と、miEBLN-1を持つコウモリと持たないコウモリのゲノム配列を用いた配列比較解析を進めている。また、このような解析と並行して、これまでに得たmiEBLN-1についての知見に基づいた論文を執筆中であり、来年度中の学術誌掲載を目標としている。
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