研究課題
矯正学的歯の移動の際に発現するTNF-αは、破骨細胞形成に重要な役割を果たしている。矯正学的歯の移動時の圧迫側では、歯槽骨内にある骨細胞は歯槽骨表面に近い領域から急激に細胞死を起こしていくことが報告されている。さらに、IL-33はdamage-associated molecular patterns(DAMPs)のひとつであり、細胞障害により放出されて自然免疫を制御している重要な因子であることがわかってきた。本研究では、矯正学的歯の移動時のTNF-αによる骨細胞のネクロプトーシスと、その際に放出されるIL-33の骨代謝への関連性を調べることが目的である。現在までに、IL-33のTNF-α依存性の破骨細胞形成への影響と、矯正学的歯の移動時のIL-33の影響について研究を行った。まずは、破骨細胞前駆細胞にTNF-αを作用させ、さらにIL-33加えて培養し、破骨細胞形成と骨吸収能を評価した。IL-33はTNF-α依存性の破骨細胞形成および骨吸収能を有意に阻害することが確認できた。また、マウス頭蓋部にTNF-αを投与すると頭蓋冠における破骨細胞形成および骨吸収が増加したが、IL-33を同時に投与すると破骨細胞形成および骨吸収は減少した。さらに、IL-33が破骨細胞形成を阻害する分子メカニズムに対する解析を行った。Western blottingと免疫蛍光染色により、IL-33はIκBのリン酸化とNF-κBの核内移行を抑制することで、破骨細胞形成を阻害することが示唆された。次に、矯正学的歯の移動のマウスモデルを用いて、第一臼歯を近心移動させる際にIL-33を投与し、歯の移動量と破骨細胞形成について評価した。12日間歯を移動させた場合、IL-33を投与した群は、IL-33を投与しなかった群と比較して歯の移動量と破骨細胞形成が有意に減少した。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度は、IL-33のTNF-α依存性の破骨細胞形成への影響と矯正学的歯の移動時のIL-33の影響に焦点を当てて研究を遂行した。予定通り、IL-33の骨代謝に対する影響を明らかにすることができた。IL-33はTNF-α依存性の破骨細胞形成を阻害し、歯の移動時の破骨細胞形成を抑制するという予想と一致した結果が得られている。
令和3年度は、C57BL/6JマウスおよびTNF受容体欠損マウスにNi-Tiクローズドコイルスプリングを装着し、上顎左側第一臼歯を近心移動させて、圧迫側に発現するTNF-αによる骨細胞の細胞死を評価する。また、骨細胞が蛍光するDMP1-Topazマウスから骨細胞の単離を行い、骨細胞にTNF-αを加えて培養後、免疫蛍光染色でネクロプトーシスの解析を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 11件)
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