本研究は、希少種ミヤマシジミの保全と水田害虫の低密度化の両立を可能とする管理体系を確立することを目的としており、当該年度の結果からミヤマシジミ保全に資する適切な畦畔管理体系の理解が大きく進んだ。 メタ個体群を形成するミヤマシジミの局所個体群の生息地における3年間(9世代分)の草刈り実験を通して、実験区のうち半数以上で局所個体群サイズの有意な増加トレンドが見られ、その結果、モジュール構造を考慮した生息地ネットワークの中心性指標も有意に増加した。したがって適切な撹乱頻度・タイミング・強度を同時実現できれば、局所個体群サイズを増加させ、メタ個体群のハブとなる生息地パッチを生み出すことができることが示唆された。 地際刈り・10cm高刈り・20cm高刈りの3つの処理を施した実験区では、10cm高刈りでミヤマシジミ幼虫密度が最も高く、ヤドリバエによる寄生もセンチュウによる寄生も高刈り区で有意に多いことが分かった。ヤドリバエの寄生を減らすには共生アリの随伴が、センチュウによる寄生を減らすには好天が効くことも示唆され、適切な撹乱強度によって生息地の質を改善できる可能性も明らかとなった。一方で、共生アリの密度は実験を行った3年間で、どの処理においても有意な変化は認められず、撹乱が生息地の質を変化させるには数年以上の時間を要する場合もあることが示唆された。
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