研究実績の概要 |
メソ多孔性イオン結晶Cr[Cr3O(OOCCH2CN)6(H2O)3]3[PW12O40]・69H2O (I)は酸化還元特性に乏しい。そこで、[PW12O40]3-と同じ価数を持ち酸化還元特性に優れた[PMo12O40]3+を用いて、酸化還元活性を持つメソ多孔性イオン結晶の合成を試みた。その結果、(I)と同構造を持つCr[Cr3O(OOCCH2CN)6(H2O)3]3[PMo12O40]・51H2O (II)を得ることに成功した。金属クラスター合成に重要な対カチオンの可換性を調査した結果、対カチオン交換体Mn+xH3-nx[Cr3O(OOCCH2CN)6(H2O)3]3[PX12O40]・nH2O (M=Fe3+, Cr3+,Co2+ etc, X=W or Mo)が容易に得られることが明らかとなった。(II)を用いて還元的イオン交換と金属ナノクラスター合成を試みた。しかし(II)は構造安定性に乏しく、酸化還元によって不可逆的な構造変化を起こし、触媒として不適であることが明らかとなった。一方で検討の過程で見出した対カチオンの可換を利用することで、(II)の酸触媒性能を連続的に制御できることを見出した。この結果をまとめた論文はDalton Trans., 49, 10328. (2020).に掲載された。 多孔性イオン結晶を酸化還元触媒として利用するためには構造の安定性が重要である。そこで、高価数のポリ酸を用いて新たな多孔性イオン結晶の合成を試みた。高価数のポリ酸は強い静電相互作用によって構造を安定化する。種々の検討の結果、高い構造安定性と酸化還元特性を持つ新規結晶(III)の合成に成功した。現在、(III)の酸化還元触媒への応用を検討しており、電気化学的な水の酸化に対して活性を持つことが示唆された。現在詳細な検討を進めており、論文投稿を予定している。
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