αシヌクレイン(α-syn)の生体イメージングはパーキンソン病(PD)の早期診断を可能とする生前の確定診断法となり得,それによる適切な治療方針の選択も可能になると考えられる.また,α-synイメージングによる画像診断と病理診断を組み合わせることで,PD の病態メカニズムの詳細な理解や根本治療薬の開発にも繋がると期待される.本研究課題では,独自の化合物ライブラリーを用いてα-syn凝集体への結合親和性を示す化合物を探索し,それを基盤としてα-syn選択的な放射性イメージングプローブを開発することを目的とする.令和3年度は,脳内挙動に課題を有する[123/125I]PHNP-3を基盤として,α-synへの結合親和性および結合選択性を維持しながら脳内挙動を改善する新規プローブの創製を目指した. 本研究では計算科学に基づく合理的手法を用い,陽電子断層撮像用核種である放射性フッ素原子を導入した新規カルコン類縁体([18F]FHCL-2)を設計・合成した.FHCL-2はα-syn凝集体への高い結合親和性および結合選択性を示したことから,放射性フッ素で標識した[18F]FHCL-2を用いて正常マウスにおける体内動態を評価したところ,本研究のリード化合物である[125I]PHNP-3と比較して脳移行性の向上が認められた.そこで,α-syn凝集体を脳内に接種したモデルマウスを作製し本プローブを投与したところ,脳内のα-syn凝集体を描出したことから,[18F]FHCL-2を用いたα-syn凝集体の生体イメージングの可能性が示唆された.以上の一部の内容は,第61回 日本核医学会学術総会で発表した.以上より,交付申請書に記載した研究実施計画は概ね達成した. 本研究より得られた成果は,α-synイメージングプローブの開発研究を促進し,優れた性能を有するさらなるプローブの開発に繋がるものと考えられる.
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