本研究の目的は,耐故障性を有する小面積で高性能なネットワークオンチップ(NoC)型のメニーコアシステムを実現することである.そのために,ハードウェアとソフトウェアの両側面から,システムの性能の向上を図る.故障箇所を避けるための耐故障ルーティング法には,コア(処理装置)とルータ(通信装置)をノードとするネットワーク上でパケット通信を行う際,故障ノードを迂回することにより,通信遅延が増加する問題がある.この問題に対して,ハードウェアの側面から,ネットワークを拡張するアプローチを考案し,それを基にした(1)新たな耐故障ルーティング法を提案した.また,NoC上で実際のプログラムを実行した際,通信遅延が実行時間に与える影響を明らかにするための(2)評価方法を提案した. (1)においては,ノードの周辺にスイッチとリンクを追加することでネットワークを拡張し,ノードが故障した場合に,当該ノードをバス化してパケットが通過することを可能にした新たなネットワークアーキテクチャを考案し,これを基に耐故障ルーティング法を提案した.その結果,ネットワークサイズやノード故障率などを変化させた場合,提案手法の通信遅延が従来の手法よりも約78.6%削減できることを明らかにした. (2)においては,実際の並列プログラムを使用してプログラムの処理時間やプロセス間の通信パターンを抽出し,その情報を基に耐故障ルーティングのシミュレーションを行うことで実行時間を測定し,評価するための方法を提案した.その結果,前年度に提案した耐故障ルーティング法は従来手法よりも実行時間が約56%削減できることを明らかにした. 以上の結果から,本ルーティング法では,通信遅延が削減できることを明らかにし,本評価法では,実際のプログラムを用いて耐故障ルーティング法が実行時間に与える影響を明らかにできるようにした.
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