研究課題
本研究では、マダニ媒介性新興リケッチア目細菌感染症の国内実態解明を目的としている。当該年度では、エーリキア症に関する知見が得られたため報告する。エーリキア症の病原体は、リケッチア目アナプラズマ科に属する偏性細胞内寄生性のヒト感染型Ehrlichia属細菌 (米国では、E. chaffeensis) で、分離・培養が容易でないことから、国内ではほとんど調査されておらず、その実態は未解明な点が多い。そこで、国内マダニが保有するEhrlichia属細菌における疫学調査を行い、エーリキア症を引き起こす起因菌の遺伝子型について考察した。まず、PCRスクリーニングにより、フタトゲチマダニ、キチマダニとヤマアラシチマダニの3種のマダニからEhrlichia属細菌のp28遺伝子群を検出することに成功した。次に、これらの陽性マダニDNAから5つの遺伝子を増幅し、その連結配列を基にした系統分類手法を考案した。そして、既存のゲノム情報をもつEhrlichia属細菌分離株の配列と比較したところ、今回得られたEhrlichia属細菌は6つの新たな遺伝子型 (Genotype) に分類されることが判明した。そのうちのフタトゲチマダニから得られたGenotype 2に含まれるEhrlichia属細菌の16S rDNA配列は、最近、台湾で報告された2名のエーリキア症患者から検出された配列と一致したことから、Genotype 2は国内のエーリキア症を引き起こす遺伝子型である可能性が高いと考える。さらに、リアルタイムPCRにより、マダニ体内のEhrlichia属細菌の保有量を調べた結果、6.3E+3~2.0E+6コピー/マダニ1個体と幅広い保有量であることを明らかにした。本研究で得られた知見は、国内のエーリキア症の実態解明に大きく貢献するものと考える。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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