研究実績の概要 |
公開された胎齢9.5日-13.5日の発生期マウス全身の細胞の単一細胞RNAシークエンシングのデータより、5,000個の発生期内耳上皮細胞のデータを抽出した。その5,000個の細胞を二次元にプロットしクラスタリングを行った結果、胎齢9.5日の時点では蝸牛と前庭の区別ができないものの、胎齢10.5日の時点で蝸牛と前庭の前駆細胞が明確に異なるクラスターとして検出できた。組織学的にまだ蝸牛と前庭の明瞭な差がない時期に異なる細胞集団としてとらえることができたのは過去の文献で報告がなく、本研究の目的となる細胞集団の検出に成功したと言える。ここまでの成果は2020年にDevelopmental Biologyに掲載された。 公開データの解析で一定の成果が得られた一方で、利用したデータの検出できている遺伝子が一細胞当たり約600個と少なく、蝸牛・前庭の運命決定のメカニズムを理解するためには検出できる遺伝子を増やすことが必要と考えられた。また、胎齢9.5日から10.5日間でのトランスクリプトームの変化が大きく、その間に起こっている現象が重要である可能性もあり、胎齢10.0日のデータもあることが望ましい。そのため、改めて本研究で必要なデータを得る方針とした。 胎齢9.5日、10.0日、10.5日、11.5日の耳胞をサンプルとして、10x Genomics Chromiumを用いて単一細胞トランスクリプトームデータを得た。検出できた細胞当たりの遺伝子数は約6000で公開データの解析の約10倍の遺伝子が検出できた。公開データの解析同様、胎齢10.5日で明らかに蝸牛と前庭の前駆細胞を区別することができた。
|