研究課題/領域番号 |
20J14875
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松本 浩輔 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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キーワード | 非線形光学効果 / 回折光 / 色素 / 偏光 / 光強度 / 液晶 |
研究実績の概要 |
本研究は,高分子安定化色素ドープ液晶に光を入射した際に発生する回折光の形状変化を利用し,入射した光の強度,偏光状態などの光学特性を同時検出することを目的としている。初年度に当たる本年度は,光入射を行った際に発生する回折光形状が,入射光特性とどのような相関をもつのか,またその回折光を生み出す系中の液晶・色素分子の配向がどのようになっているのかを詳細に調べた。 垂直配向処理を施したガラスセルにホスト液晶5CBとゲスト色素TR5,高分子安定化のためのPA4CBが封入されたサンプルを作製し,波長488 nmの断面が真円なレーザー光を直径50μmでサンプルに入射したところ,光強度変化に伴って楕円形の回折光が出現した。回折光形状のアスペクト比を観察したところアスペクト比は約1.4となった。高分子を添加しない材料系の値(約1.2)より大きくなった。高分子安定化したサンプルでは液晶の異方的な性質の一つである弾性定数が変化したことから,液晶分子の弾性定数異方性が回折リングの異方性の原因であると考えている。 初年度の研究を通じて,入射光の偏光状態検出に必要な回折光形状の異方性の原因を分子物性スケールで理解することに成功した。これらの結果は,液晶分子がもつミクロな異方性が光回折というマクロな機能へと増幅されることを明確に示した結果であり極めて意義深い。本年度の知見を活かし,来年度はCCDカメラを用いたより定量的な回折光形状の評価を行い,入射光特性の検出へとつなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である「液晶の非線形光学効果に基づく回折光を利用した光学特性検出」を達成するため,初年度は高分子安定化色素ドープ液晶の作製,高分子安定化による回折光形状異方性の増大,液晶弾性定数の測定の3点について研究を行った。いずれについても実績概要に記載した通り,研究計画に従い実施を行い興味深い結果が得られた。また筆頭著者論文が2報受理され,1報については出版された。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は偏光検出に必要な回折光異方性についてより詳細な検討を行い,高分子安定化に回折光の異方性が増大することがわかった。また,この現象が液晶の弾性定数によって議論できることも明らかとなった。次年度はこれらの知見を活かし,以下の二点について検討する。 1.複数のCCDカメラを用いて回折光形状を解析し,回折光と光学特性の相関を定量的に評価する。 2.定量評価した回折光形状から入射光特性の検出を遂行する。
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