本研究は,高分子安定化色素ドープ液晶に光を入射した際に発生する回折光の形状変化を利用し,入射した光の強度,偏光状態などの光学特性を同時検出することを目的とした。最終年に当たる本年度は,初年度に観察した高分子安定化色素ドープ液晶の回折光形状異方性を定量的に観察し,サンプル内部の分子配向変化,および材料物性との相関を詳細に調べた。 初年度に作製した高分子安定化色素ドープ液晶に波長488 nmのレーザー光を入射したところ,楕円状回折光が出現した。CCDカメラを用いて最外殻の回折光を観察したところ,高分子安定化色素ドープ液晶のリング形状のアスペクト比は,従来の色素ドープ液晶と比較して明確に上昇した。液晶の弾性定数を測定したところ,高分子添加により弾性定数の異方性が向上することがわかった。この弾性定数の異方性増大はアスペクト比の向上を首尾よく説明する結果であることから,高分子添加によって分子配向変化挙動における異方性が向上することが異方的な回折リング形状を引き起こすと考えている。 円偏光入射時にも,直線偏光入射時と同様な楕円状回折光が出現した。さらに,この回折光は定常的な円偏光入射により回転することを見出した。入射光強度やサンプルの膜厚,温度によって回転速度は変化することがわかった。 以上の結果は,入射レーザー光の強度や偏光状態などの特性を,色素ドープ液晶により可視化できることを示唆するものである。
|