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2020 年度 実績報告書

液体金属の拡散係数を統一的に記述する新規推算式の構築

研究課題

研究課題/領域番号 20J14950
研究機関早稲田大学

研究代表者

椎木 政人  早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2022-03-31
キーワード液体金属 / 自己拡散 / 相互拡散 / 不純物拡散 / シアーセル法 / 蛍光X線分析 / 熱力学的因子 / Darkenの式
研究実績の概要

液体金属の拡散は金属の凝固・結晶成長におけるミクロ組織形成を考える上で重要な輸送現象である.本研究は液体金属の拡散係数について自己・不純物・相互拡散係数を統一的に記述する推算式を構築することを目的に研究を行った.シアーセル法及び蛍光X線分析を用いて液体Pbの自己拡散実験,液体Sn中の不純物拡散実験,そして液体SnPb合金の相互及び固有拡散係数の同時測定実験を行った.
液体Pbの自己拡散実験では773 Kで実験を行い,実験中における自然対流の発生有無を過去の宇宙実験の結果と比較した結果,相対誤差0.47 %の範囲内で宇宙実験の結果と本実験結果が一致したことより自然対流の抑制を確認した.液体Sn中の不純物拡散実験では,573Kから973 Kにおける実験結果や文献値に基づいて剛体球モデルを用いた予測式の構築を行った.その結果,不純物拡散係数と自己拡散係数の比に対して溶媒及び溶質元素の比と熱力学的因子の積を取った式,そして溶媒元素単体時と合金時の二体分布関数の比を用いた式の双方において実験値と約10 %の確度で値が一致する予測式が成り立つことを明らかにした.そして液体SnPb合金の相互及び固有拡散係数の同時測定実験では,Darkenの式を検討するために拡散対の平均濃度がSnXPbY(X+Y=100)に対してX = 5, 95の条件において773 Kで相互拡散実験を行った.そして相互拡散係数の濃度依存性を考慮するため,取得した濃度分布に対してSauer-Freise法を適用し相互拡散係数を取得した.相互拡散係数の精度を向上させるため,液体Pbの自己拡散実験結果,濃度分布の傾きや相互拡散係数として適応する濃度に着目して解析を行った結果,特にX = 5, 95の濃度では従来報告されている値と一致する結果となった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和二年度の実施内容として,以下を計画していた.1)自己拡散,2)不純物拡散,3)相互拡散,4)分子動力学シミュレーション(ドイツ航空宇宙センターとの共同研究).1)から3)に関しては上記で報告した通りの結果を得ており,データ解析及び論文の投稿を進めている.しかし4)について今年度は世界的に流行している新型コロナウイルスの影響を受けて,予定していた共同研究先での滞在を見送ることにした.そのため来年度行う予定であった蛍光X線を用いた液体Sn中のBiの不純物拡散の研究を本年度に前倒して行った.不純物拡散中にX線を照射し,蛍光X線スペクトルのin-situ測定を行った.そして測定強度の時間変化に対して実験条件より求まるフィット曲線を適応し時々刻々と変化する見かけの拡散係数を取得した.この見かけの拡散係数は測定初期段階に大きく変動するため,初期段階の誤差を低減する為に必要な拡散時間の決定方法について検討を行っている.

今後の研究の推進方策

液体金属の拡散係数について自己・不純・相互拡散それぞれに対して高精度な拡散係数の取得するための解析方法について明らかにした.そして引き続き推算式構築に必要な拡散係数をシアーセル法と安定密度配置や蛍光X線分析を用いたその場観察による高精度拡散係数測定により取得する.加えて推算式構築の際に重要となる液体金属の静的構造や動的構造を表す二体分布関数や速度相関関数については,分子動力学シミュレーションにより取得した位置データの解析を行うことで取得する.以上より取得した拡散係数や構造因子に加えて,粘性など既存の熱物性値データを基に,次年度で得られたデータを含めて総括を行う.そして拡散係数の易動度を溶媒に対する溶質の原子半径比や熱力学的因子,溶媒と溶質間の二体分布関数によって整理し,自己・不純物・相互拡散係数を統一的に記述する推算式を明らかにする.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] シアーセル法を用いた液体Pbの自己拡散係数測定における安定密度配置の検証2020

    • 著者名/発表者名
      椎木政人,西村友希,登林兼丸,鈴木進補
    • 学会等名
      日本マイクログラビティ応用学会 第32回学術講演会
  • [学会発表] 液体Sn-Pb合金の相互および固有拡散係数同時測定時における濃度分布解析2020

    • 著者名/発表者名
      西村友希,椎木政人,鈴木進補
    • 学会等名
      日本マイクログラビティ応用学会 第32回学術講演会
  • [学会発表] 蛍光X線分析を用いた液体金属の拡散係数に対するin-situ測定と時系列解析2020

    • 著者名/発表者名
      小林由央,椎木政人,山竹玲奈,鈴木進補,正木匡彦
    • 学会等名
      第32回日本マイクログラビティ応用学会学術講演会
  • [学会発表] 安定密度配置とシアーセル法を用いて測定した液体Sn中におけるCuの不純物拡散係数2020

    • 著者名/発表者名
      登林兼丸, 椎木政人, 西村友希, 鈴木進補
    • 学会等名
      第32回日本マイクログラビティ応用学会学術講演会
  • [学会発表] 液体金属の蛍光X線分析におけるスペクトル解析2020

    • 著者名/発表者名
      山竹玲奈, 椎木政人, 小林由央, 鈴木進補, 正木匡彦
    • 学会等名
      第56回日本分析化学会X線分析研究懇談会
  • [学会発表] Precise Measurements of Impurity Diffusion Coefficients in Liquid Sn with varying Temperatures and Impurity Elements2020

    • 著者名/発表者名
      Masato SHIINOKI, Noriyuki YAMADA, Anna TANAKA, and Shinsuke SUZUKI
    • 学会等名
      16th International Conference on Diffusion in Solids and Liquids
    • 国際学会
  • [学会発表] Concentration Dependence of Interdiffusion Coefficients in Sn-Pb Alloys2020

    • 著者名/発表者名
      Yuki NISHIMURA, Masato SHIINOKI, and Shinsuke SUZUKI
    • 学会等名
      16th International Conference on Diffusion in Solids and Liquids
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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